「ベストパフォーマンスならどんな相手にも勝てる」カップ戦“2冠”に挑む広島の指揮官スキッベの確信【インタビュー】

2022年10月15日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

“反復”トレーニングの意図は?

就任1年目でタイトル獲得に挑むスキッベ監督。広島は「良いクラブで、良い選手が揃っている」と自負する。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 ルヴァンカップと天皇杯、いずれのコンペティションでもファイナルに進出――カップ戦"2冠"を目ざすサンフレッチェ広島を率いるのは、就任1年目のミヒャエル・スキッベ監督だ。確かな手腕でチームを上昇気流に乗せたドイツ人指揮官のマネジメント術をディープに掘り下げる。

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 開幕3試合連続ドローのあとに2連敗。シーズン序盤は5戦未勝利と躓いたが、6節のアウェー湘南戦でようやく今季初白星を掴む。クロスから満田誠が決勝点を奪い、1-0の勝利を収めた。

「難しいゲームでしたが、確かにターニングポイントとなりました。攻撃のバリエーションを多く作るためにまず着手したのが、相手の背後を突く動き出しとクロスからの得点で、練習の成果が結果に出た試合です」

 この湘南戦以降も、良質なクロス攻撃から得点を量産。どんなトレーニングを繰り返してきたのか。

「クロスを上げて中の選手が合わせる練習ですが、ニアだけでなくファーサイドの選手もゴール前に入るように徹底させています。クロスが直接ゴールにつながらずともコーナーなどセットプレーを獲得できるケースが増えているので、そういう点でもトレーニングの効果が出ています」

 選手たちは「シンプルな内容だけど、何度も繰り返すと結果が出てきた」と確かな手応えを口にする。"反復"の意図とは?

「サッカーで最も難しいのは、分かりやすいプレーだからです。クロスも、中で合わせてゴールに押し込むシュートも、単純だけど難しい。なぜなら個々の技術だけでなく、パスの出し手と受け手のタイミングを合わせる必要もあるからです。だから味方同士の息がオートマチックに合うまで何度も繰り返す。練習と同じ局面がゲームで起こり、得点につながると選手は成功体験を掴めます」
 
 一方の守備では、前線からのプレッシングが奏功。とりわけホームで2-0と勝利した7節の横浜戦は圧巻のプレス強度だった。これもトレーニングの成果のようだ。

「シーズン序盤はクロスとプレッシングに特化して練習しました。前線からのプレスはプレシーズンから掲げた基本スタイルですが、発展した今は、前でハマらない時にミドルサードで守備陣形を整えられている。また、対戦相手の特徴に応じて敵が嫌がるプレッシングもできています。バリエーションは攻撃だけでなく、守備にも必要です」

 また、ホームで3-0と勝利した12節の鹿島戦で初めて3-5-2のフォーメーションを採用し、以降は基本システムの3-4-2-1と使い分けている。これも守備のバリエーションを増やすためだという。

「広島は長く採用している3-4-2-1のフォーメーションに慣れていますが、相手も広島の戦い方の勝手が分かります。敵を困らせるために重要なのは、オプション布陣だと考えました」
 

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