「タケはすでにピッチ上のスターだ」久保建英の敵将への“リベンジ達成”にソシエダ番記者は感服!「エメリは驚きながら見ていただろう」

2022年10月13日 ミケル・レカルデ

「復讐は冷たい皿に盛られた料理」を成し遂げた瞬間だった

ビジャレアル時代に指導を受けたエメリ監督(右)の前で好プレーを見せた久保(左)。(C)Getty Images

 ウナイ・エメリ監督は驚きながらその光景を見ていたことだろう。87分、アノエタの観客がベンチに退くタケ・クボ(久保建英)をスタンディングオベレーションで見送った。テレビカメラは、その瞬間のエメリの表情を捉えていた。

 その少し前には、決勝ゴールを挙げたブライス・メンデス、好調をキープするアレクサンダー・セルロト、巨匠のダビド・シルバが交代時に同様の栄誉にあずかったが、この日最大級の拍手を受けたのはタケだった。いつも礼儀正しく、とても真面目な日本人選手は、ベンチに着くと少し微笑んだ。タケがスペイン語で言うところの「復讐は冷たい皿に盛られた料理」を成し遂げた瞬間だった。

 ここ数年のレンタル移籍の失敗は、周囲が適切に移籍先をアドバイスしなかったため――。今夏、タケの加入に対して懐疑論が持ち上がった時に、擁護派が主張した意見だ。ソシエダが初めてレンタル移籍を打診した20年夏、争奪戦を制したのがビジャレアルだった。

【動画】敵将エメリの目の前で…途中交代の久保にソシエダのファンが盛大なスタンディングオベーション
 エメリをよく知る人物は、この報に驚いた。選手に最大限の要求を課し、自分の思い通りに動かない者には容赦しない、というエメリ監督の方針には、タケはそぐわなかったからだ。言うまでもなくここでは怠惰や自分を限界まで追い込まないなどとは全く別の話だ。

「タケはピッチ外のスターだ。ピッチ上でスターになるべき」

 エメリのこの発言がビジャレアルにおける挑戦の終わりの始まりだった。エメリは記者会見で毎回、タケの状況に関する質問をされることに居心地の悪さを感じていた。数週間後、タケのヘタフェへの移籍が取り沙汰されていた最中だった。

 記者会見でその件について質問されたエメリは、次のように返答した。

「2日前にタケと話をして、残りたいのか、去りたいのか確認した。自分がプレーすべきと考えるよりも出場機会を得ていないことから、出口を探しているということだった。我々は彼に去ってほしいと言ったことは一度もない。私はビジャレアルのことを考えている選手を優先する。タケの振る舞いは良く、ビジャレアルのことが頭の中にあった時には、チームの助けになってくれた。まだまだ足りない部分はあるが、辛抱強く出場時間と経験を積み重ねていけば、今後もっと伸びるポテンシャルを秘めている。しかし、彼は今自分が置かれている状況において、もっとプレーする必要があると考えている」

 結局、数日後、タケのヘタフェへの移籍が決まったが、これもまたプレースタイルにフィットしたチームとは言えず、予想外の移籍先であった。
 

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