「正直言うと、力を抜きすぎていたかも」“サプライズ選出”だった乾貴士はなぜロシアW杯で輝けたのか「本番は楽しめばいい」

2022年10月10日 元川悦子

「僕はホンマ、ギリギリでしたからね(苦笑)」

ロシアW杯では日本の全4試合に出場。通算2得点と特大のインパクトを残した。(C)SOCCER DIGEST

 11月1日のカタール・ワールドカップ(W杯)最終登録メンバー発表まで3週間。当落線上と位置づけられる面々は、心身ともに落ち着かない日々を強いられているはずだ。

 4年半前の2018年ロシアW杯でそういう経験をした1人が、乾貴士。結果的に4試合全てに出場し、グループステージ2節のセネガル戦(2-2)と、ラウンド16のベルギー戦(2-3)でゴールを奪う活躍を披露。日本のベスト16進出の原動力となったのは周知の事実だ。

 しかしながら、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が率いていた同年3月のマリ・ウクライナ2連戦では、まさかの選外。当時は中島翔哉の評価がうなぎ上りで、指揮官が西野朗監督に代わらなければ、乾のW杯行きはなかったかもしれないのだ。

「僕はホンマ、ギリギリでしたからね(苦笑)。でも当時は正直、ワールドカップのことはあまり考えてなかった。もちろんメンバーに入りたいとは思ってましたけど、スペインでサッカーができることが楽しかった。

 エイバルで1~2シーズン、試合に出続けて、気持ちも身体も一番良い状態でやれていた時期だったから、『ワールドカップに出ることが全てではない』という考えもあったんです。『代表にメチャクチャ入りたい』とか『入らなきゃいけない』っていうのはなかったですね」

 気負わず、日々のプレーに集中していたと明かす。
 
 そのマインドは同世代の本田圭佑、岡崎慎司、香川真司らとは全く異なる。乾も初代表は岡田武史監督時代の2009年だが、そこからは入ったり入らなかったりが続き、不動の存在というわけではなかった。それが価値観の違いを生み出したのだろう。

「真司とかオカちゃん、圭佑君たちとは背負ってきたものが違う。僕は常連じゃなかったし、1年空くのなんて当たり前だった。『代表がなかったらサッカー人生として物足りない』という価値観はなかった。実際、ロシアも入らないと思ってたくらいですし(苦笑)。

 でも西野さんにチョイスしてもらったのは嬉しかった。自分でも一番サッカーを理解できてるなと感じていた頃だったんで、何となくやれそうな自信はありました」

 乾は"サプライズ選出"を冷静に受け止めた。
 

次ページ自身初のW杯だが、普段と変わらないメンタルで

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