浦和レッズの元守護神、山岸範宏が探求する“GKコーチの理想郷”。大事にしている恩師オフトの戒め

2022年09月07日 河野正

ずっと憧れのクラブだった浦和に13年半在籍

現在44歳の山岸氏。2019年からJFAアカデミー福島の男子U-18でGKコーチを務める。写真:河野正

 埼玉県で生まれ育った山岸範宏にとって、Jリーグきっての人気を誇る浦和レッズはずっと憧れのクラブだった。その浦和に13年半在籍し、モンテディオ山形とギラヴァンツ北九州でもプレー。2018年に40歳で現役を引退し、翌年からJFAアカデミー福島で指導者としてのキャリアをスタートさせた。

 00年の第49回全日本大学選手権で初優勝を飾った中京大の山岸は、大学ナンバーワンGKとして01年に浦和入り。1月28日の加入会見で「好きな選手はパラグアイ代表の(ホセ・ルイス・)チラベルト。大卒なので1年目から公式戦出場を狙いたい」と抱負を述べたが、西部洋平、安藤智安に次ぐ3番手にとどまり、出番はなかった。それでも2年目の第1ステージ・3節の清水エスパルス戦でデビューすると、的確なコーチングと優れたシュートストップを武器に守護神の座を手に入れた。

 熊谷高時代は、横浜マリノスに進んだ同い年の浦和学院高・榎本達也の陰に隠れた無名選手。「技術や身体能力がずば抜けて高いわけではなく、努力するしかなかった。これを続けることでプロの道が開けたし、試合に出られない悔しさや失点に絡んだ悔しさをエネルギーに変え、気が済むまで練習しました」と、成功に至った背景を説明する。

 確かに浦和時代の山岸は、練習が終わってもなかなか帰らなかった。居残りでジョギングや体操をした後、トレーナーに入念なトリートメントを施してもらい、コンディションを維持した。引き揚げるのは選手の中で決まって一番遅く、話を聞きたい時は長い時間待機したものだ。

 山岸は「試合に向け、いかにいい準備をするかが最大の責任。満足のいく準備ができた時って、やっぱりいいパフォーマンスを発揮できるんですよ」と経験談を語る。
 
 加入3年目の03年、ガンバ大阪から日本代表のGK都築龍太が移籍してきた。ここから同い年の2人による、熾烈なポジション争いが長らく展開されることになる。

 第1ステージは開幕から山岸が先発したが、5節のセレッソ大阪戦で6失点し、8節と9節の2試合で計7失点。GKが代わるのは、故障か大量失点が続いた時が相場だ。10節の横浜戦から都築に定位置を譲り、クラブ初タイトルとなる秋のナビスコカップ(現ルヴァンカップ)決勝の舞台には立てなかった。

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