前橋育英は夏冬連覇の偉業達成なるか? インハイ優勝後に露わになった“危機感”と乗り越えるべき課題

2022年08月17日 松尾祐希

群馬の強豪が真の王者を目ざし、リスタートを切る

13年ぶりに夏の王者に輝いた前橋育英だが、冬の日本一を見据えるなかで試練のときを迎えている。写真:松尾祐希

 夏の山を登るよりも、冬の山を登るほうがはるかに難しい。それは登山に限った話ではなく、高校サッカーもそうだ。夏のインターハイを制したとしても、続けて冬の選手権で日本一を獲るのは簡単ではない。

 1997年度の東福岡(福岡)や、昨年度の青森山田(青森山田)も、追われるプレッシャーをはね除け、夏冬の連覇を成し遂げている。夏の王者で終わるか。それとも冬も制して語り継がれるチームになるか。13年ぶりにインターハイを制した前橋育英(群馬)は、真の王者を目ざし、新たな目標に向かってリスタートを切っている。

 7月30日、前橋育英は徳島の地で大旗を手にした。山田耕介監督の恩師である故・小嶺忠敏監督が昨季まで率いていた、長崎総科大附(長崎)との1回戦から思うような試合運びができなかったが、尻上がりに調子を上げ、勝負強さを発揮。帝京(東京)とのファイナルでは、後半のアディショナルタイムに10番を背負うFW高足善(3年)が均衡を破る決勝ゴールを挙げ、1-0の勝利。試合後には指揮官の身体が徳島の空に舞った。

 あれから2週間。チームは夏の王者としてフェスティバルに参戦したが、満足できる結果と内容を残しているとは言い難い。
 
 8月6日から行なわれた和倉ユースサッカー大会ではまさかのグループステージ敗退。全国各地の強豪校やJクラブの下部組織が参戦したコンペティションで、日本航空(山梨)には3-0で勝利したが、日大藤沢B(神奈川)、履正社(大阪)に0−1で敗戦。17位~32位トーナメントでも興國(大阪)に1-3で敗れるなど、不本意な成績で石川の地を後にしている。

「もう1個上のプレッシャーを覆す余裕がまだない」(主将・MF徳永涼/3年)と、反省の弁が口に出るほど思わしくなかった。大会後は前橋にあるグラウンドに戻り、トレーニングを再開した夏の王者にとって、試練のときを迎えているのは確かだろう。
 
 山田監督も危機感を覚えており、筆者が8月中旬に学校に訪れた際も、チーム作りに細心の注意を払いたいと話していた。

「2009年度しか夏は優勝していない。そういう経験をしていないし、あのときも冬の選手権は1回戦で負けている。だからこそ、ふわっとした雰囲気にならないようにしないといけない」

 ただ、反省を踏まえ、選手たちも練習から緊張感を高めることに注力している。紅白戦ではピリッとした雰囲気があり、選手からは熾烈なポジション争いを勝ち抜くという強い意志も見て取れた。
 

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