【総体】「善!みんな信じているぞ!」仲間のエールに奮起したタイガー軍団の10番、「ごちゃごちゃ考えず」“感謝”の優勝弾!

2022年07月31日 安藤隆人

総体予選の準決勝以降はノーゴールだった

終了間際に値千金の決勝点を挙げた高足(10番)。得意のカットインで振り切り、迷わず右足を振り抜いた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[インターハイ決勝]帝京0-1前橋育英/7月30日(土)/鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアム

 周りがずっと背中を押してくれた。だからこそ、絶対にその想いに応えたかった。

 帝京(東京)とのインターハイ決勝、0−0で迎えた後半アディショナルタイムに、前橋育英(群馬)の10番を背負うFW高足善(3年)のもとにMF堀川直人(3年)からパスが繋がった。高足は素早いボディシェイプと正確なボールタッチを駆使して対峙したDFを得意のカットインで振り切ると、迷わず右足を振り抜いた。

 放たれたボールは弾丸ライナーでゴールに向かい、再三ファインセーブを見せていた帝京GK川瀬隼慎(2年)の脇を破った。高足の今大会初ゴールが決勝弾となり、前橋育英が13年ぶりのインターハイ制覇を成し遂げた。

「もうずっと申し訳ない気持ちで、ホテルに帰ってもゴールのことばかり考えていました」

 10番を背負いながらも今大会は決勝までノーゴール。さらにはインターハイ予選準決勝の共愛学園戦以降は1点も取れていない(それまではプレミアリーグEASTで4ゴール)。かつてないほどのスランプに陥っていた。

 それでも、山田耕介監督はプレミアEASTでも今大会でも10番を信じてスタメンで起用し続けた。だが、なかなかその想いに応えることができないまま、決勝の日を迎えた。
 
「決勝で必ず点を取って優勝に導く」

 その想いでピッチに立った。しかし、一度ついたネガティブな感情はなかなか消えなかった。切れ味鋭いスプリントとドリブル、判断の良いパスで攻撃のリズムは作り出すなか、0-0で迎えた後半2分、浮き球のボールを鮮やかな肩トラップから足もとに収めると、急加速してDF2人を打ち抜きGKと1対1に。しかし、シュートはGK川瀬のビッグセーブに阻まれた。

「今日も入らないのかと一瞬思ってしまった」という高足は、後半12分に浮き球のパスに抜け出し、再びGKと1対1になった。GK川瀬が飛び出し、ボールもバウンドしている状況で、高足はループシュートを選択したが、「絶対決めなきゃと思いすぎて慎重にボールを置きに行ってしまった」と語ったように、身体に力みが入ったせいでミートがずれて、GKの頭上を破ったボールはゴール左外に外れていった。

 直後の後半15分にもゴール前でボールを受けて鋭く反転し、強烈なシュートを放つが、これもGK川瀬のビッグセーブに阻まれる。「もう決められないんじゃないか」と一瞬頭をよぎった時、クーリングブレイクに入ると山田監督やコーチからこう声をかけられた。

「3度外しても、この後に1度でも入ればいいんだ。だからシュートを打ち続けろ」
 

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