【総体】夏の日本一も先発出場ゼロ…高校選抜も経験した前橋育英MF根津元輝、笑顔の裏にあった悔しさ

2022年07月30日 松尾祐希

「やっぱり最初からフルで出たい」

度重なる大怪我からピッチに戻ってきた前橋育英の根津。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[インターハイ決勝]帝京0-1前橋育英/7月30日(土)/鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアム

 0−0のまま時計の針は後半35分を過ぎた。与えられたアディショナルタイムは7分。猛攻を仕掛けながら、なかなかゴールをこじ開けられない。しかし、後半35+4分にFW高足善(3年)が最終ラインの背後に抜け出し、GKとの1対1を制して土壇場で先制点をもぎ取った。残された時間はしっかり守り抜き、前橋育英が2009年度大会以来となる夏の日本一に輝いた。

 終了のホイッスルが鳴ると、ピッチには歓喜の輪が瞬く間に出来上がった。選手たちは仲間と抱き合い、勝利の余韻に浸る。背番号7を背負うMF根津元輝(3年)もその輪の中にいた。

 喜びを噛み締め、弾けんばかりの笑顔で過ごす最高の時間。表彰式ではチームを代表し、キャプテンのMF徳永涼(3年)に続いて登壇するなど、高校最後の夏に一生忘れない思い出ができた。だが、心中は複雑で少なからず悔しさがあったという。

「嬉しいですけど、内心は去年使ってもらっていた身としては、やっぱり最初からフルで出たい。その想いはありましたね」
 
 笑顔の裏にあった悔しさ――。仲間の前では見せないようにし、明るく振る舞っていたが、サッカー選手である以上はやり場のないもどかしさが心の中にあった。

 昨季からレギュラーとして活躍し、徳永と中盤の底でコンビを組んでいた根津。ボールを前に運ぶ力があり、3列目から決定的な仕事ができるボランチとして注目を集めていた。

 昨冬の高校サッカー選手権後には日本高校選抜に選出されるなど、周りからの期待値も高く、最終学年を迎えた今季はさらなる飛躍が見込まれていた。だが――。

 U-18高円宮杯プレミアリーグEASTが開幕する1週間前。紅白戦で右膝の後十字靭帯を損傷し、3か月の離脱を余儀なくされてしまう。懸命にリハビリを行なうが、その間にチームメイトたちはメキメキと力を付けていく。

 5月7日に行なわれたプレミアリーグ6節の青森山田戦後に山田耕介監督は「根津が帰ってきてもどこで使うか困ってしまうぐらい選手が成長している」とコメントを残したほど、中盤の勢力図は怪我をする前と大きく変わりつつあった。

 指揮官の発言は根津の耳にも入り、闘志に火をつける。「そのコメントを僕も見て、ちょっとムカつくなって思った」と冗談交じりに当時の言葉を振り返ったが、背番号7のリハビリに対する熱量は加速していく。
 

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