【総体】蹴ってよし、投げてよし――。8強入りの矢板中央に現われた“セットプレーのスペシャリスト”が持つ特大級のポテンシャル

2022年07月26日 松尾祐希

強力なロングスローに会場もどよめき

矢板中央の左SB木村。強肩と身体の柔軟性を生かしたロングスローは唯一無二の武器だ。写真:松尾祐希

[インターハイ3回戦]矢板中央1(5PK4)1東山/7月26日(火)/鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアム

 会場の観客もどよめかずにはいられなかった。敵陣深くでスローインを得ると、左SBのポジションからタッチライン側に向かっていく。助走を取ると、身体のバネを目一杯使ってロングスロー。ゴール前にボールを送り込む。糸を引くようなライナー性の球質で放たれたボールはファーサイドあたりまで届き、FKやCKと同じような決定機となった。

 7月26日にインターハイの3回戦が行なわれ、矢板中央(栃木)は関西の強豪・東山(京都)と対戦。1−0でリードして迎えた終盤の後半34分に同点とされたが、PK戦で難敵を下して初の8強入りを決めた。

 冬の選手権は過去4度もベスト4に進出している一方で、夏の最高成績はベスト16。早期敗退が多く、夏は勝ち切れないイメージが強かった。だが、今年は初戦から伝統の緻密なセットプレーを武器に勝利を重ね、今大会の6ゴール中4得点がロングスロー絡み。この東山戦でも、前半開始4分にロングスローからMF田邉海斗(3年)が先制点を奪っている。

 分かっていても止められない――。セットプレーからゴールを量産している矢板中央において、欠かせない存在が左SBの木村匠汰(3年)だ。
 
 強肩と身体の柔軟性を生かしたロングスローは、FKやCKに匹敵する唯一無二の武器。左右のサイドから投げ込まれる一投はファーサイドまで届き、計測した際に42メートルの飛距離を出したこともある。

 ロングスローを投げ始めたのは小学校のとき。原口元気(ウニオン・ベルリン)らを輩出した江南南サッカー少年団でプレーしていた際に遊びで友達とスローインをしていると、飛距離が出ることに気が付く。そこから投げ始め、高校に入学すると同級生が驚くほどのボールを投げられるまでに成長を遂げた。

「腰が重要。反動を使ってスローインをするので、肩甲骨もうまく使いながら投げている」と本人が話すように、ロングスローで飛距離を出すために必要なポイントは身体の柔軟性。矢板中央へ進学後も木村は毎日のようにストレッチを行ない、テレビを見ているときや携帯電話を操作しているときも暇さえあれば柔軟性を高める動作を行なってきた。そうした日々の積み重ねが結実。今ではファーサイドまで届くスローインを放るようになった。
 

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