大学で“尖ったサイドアタッカー”に変貌を遂げたオナイウ情滋。「兄のおかげで反骨心と向上心を持って向き合えた」

2022年07月07日 安藤隆人

「昔からお兄ちゃん子で、くっついて遊んでいた」

高速ドリブル&クロスが魅力のオナイウ情滋。複数のJクラブが獲得に乗り出していると言われる注目タレントだ。写真:本人提供

 今、大学サッカー界において注目のサイドアタッカーがいる。それは新潟医療福祉大のMFオナイウ情滋だ。

 最大の魅力は、爆発的なスプリントから繰り出される高速ドリブルと、精度抜群の高速クロスにある。右サイドでボールを持つと、細かいステップと鋭いボディシェイプを駆使して一気に相手を置き去りにすると、左右両足からシャープなスウィングでクロスをゴール前に供給したり、そのままシュートを放つなど、チャンスメーカーとフィニッシャーの両方の顔を持つ。

 6月25日に行なわれたデンソーカップサッカー大学日韓定期戦では、4-0のリードで迎えた73分に投入されると、プレー時間こそ短かったが、自慢のスピードで何度も右サイドを切り裂き、得意のクロスで二度の決定機を演出。82分には精度の高い右CKで5点目を導いた。

「北信越で対策されるなかで、どうやって自分の持ち味を出そうかと考えて実践をするということを繰り返してきたおかげで、どんどん自分のプレーに自信が持てるようになりました。総理大臣杯やインカレ、デンチャレ(今年3月のデンソーカップチャレンジ福島大会、北信越選抜で参加)で関東勢などに挑むことで、さらに自分の現在地を知るということができたことも本当に大きいと思います。今回もそうですが、本当に貴重な経験を積めますし、まだまだ自分に足りない課題も見つけることができて、自分の中で良い循環ができていると思います。この循環は大切にしたいと思います」

 試合後、ハキハキとした言葉でこう語っていたように、新潟医療福祉大に来たことで大きな成長を得ることができた。

 埼玉県出身で、ナイジェリア人の父と日本人の母を持つ。そして、5歳上の兄は現在、フランスのトゥールーズでプレーするオナイウ阿道である。今回はインタビューを通して見えた情滋の兄弟愛と、その奥で持ち続けた反骨心を描いていきたいと思う。

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「結構、兄は自分や兄弟に対してドライというか、クールというか、あまり多くを語らないタイプなのですが、僕は昔からお兄ちゃん子で、くっついて遊んでいたので、ああやって兄が活躍するとすごく嬉しいし、僕にとっても大きなモチベーションになります」

 小さい頃から情滋は常に兄に憧れと尊敬の念を抱いていた。それはどんな時も変わらなかった。

 阿道は正智深谷高で頭角を現し、高3の時はインターハイでベスト4に進出し、高卒プロでジェフユナイテッド千葉に加入した。その姿に憧れて、情滋も正智深谷に進み、1年時から選手権に出場するなど活躍した。しかし、高3では全国大会に出場することができず、プロからも声はかからなかった。
 

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