【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「ダービーを前にしてミランが迎えた重大な危機」

2015年09月09日 マルコ・パソット

ソリアーノを欲した指揮官…しかし獲得したのはクツカだった。

エンポリ戦で初勝利も、内容では完全に相手に圧倒された……。収穫といえば、期待の2トップ、カルロス・バッカとルイス・アドリアーノ(写真中央)にゴールが生まれたことぐらいか。ちなみに試合途中には、ひっそりと新戦力のクツカ(写真左)もミランでのデビューを果たしている。 (C) Alberto LINGRIA

 今年のミランの夏は、地中海、いや南国の夏のようにホットで明るく陽気だった。
 
 しかしその好天も、一瞬のうちに急変してしまった。稲光と雷鳴轟く悪天候に……。
 
 これも、ミラン再建の道のりの一部なのかもしれないが、とにかく数週間前までのポジティブな空気はすっかり消え失せてしまった。サポーターは抗議を再開し、チームは自信を失い、シニシャ・ミハイロビッチは最初の壁にぶち当たったようである。
 
 とにかく順を追って説明しよう。
 
 今から数週間前、コッパ・イタリア3回戦(対ペルージャ)で快勝した時点でミランを支配していたのは、情熱と未来への明るい見通しだった。
 
 それは確かだ。試合後、シルビオ・ベルルスコーニ・オーナーは、アドリアーノ・ガッリアーニ副会長とミハイロビッチ監督を夕飯に誘い、レストランの出口で張っていた我々マスコミに対し、上機嫌でこう言った。
 
「諸君、シニシャは今回獲得したなかで、一番重要な存在だ。彼がいれば、ミランはかつての栄光を取り戻せると確信しているよ」
 
 その発言はまた、引き続きメルカートでミハイロビッチの要望に応えるという約束でもあるように聞こえた。ミハイロビッチはかなり以前から、かつての教え子であるサンプドリアのMFロベルト・ソリアーノを獲得するよう、ベルルスコーニに要請していたのだ。
 
 しかし、最初の2試合の不甲斐ない結果と内容により、ベルルスコーニは再び財布をポケットにしまい込んでしまった。
 
 メルカートが閉まる前、ミランはユライ・クツカをジェノアから獲得した。ソリアーノと同じポジションではあるが、クツカはクツカ、ミハイロビッチが希望していたソリアーノではない。
 
 食い違いは、それにとどまらない。ミハイロビッチはフィリップ・メクセスに対して良い印象を持っておらず、彼のなかではメクセスのヒエラルキーは一番下だ。そんな彼にフィオレンティーナ移籍が持ち上がったのだが、ベルルスコーニはメクセスが好きで、移籍を阻止するだけでなく、もう1年契約を更新してしまった。
 
 これは、オーナーからのミハイロビッチに対する明確なメッセージでもあった。つまり「お前は監督の仕事だけをしていればいい。メルカートのことは私が考える」と……。
 
 ここから、ふたりの関係に微妙にひびが入ってきたと言う者もいるが、現時点ではまだそれはないと思う。ベルルスコーニは、ミハイロビッチの持つカリスマ性を気に入っている。過去の監督に比べると、彼が「破壊力」のある監督だからだ。ミハイロビッチは、チームに明確な規律と緊張感を取り戻してくれた。
 
 ただ数日前、再び夕食会があった時、ベルルスコーニは「私は、もう少し良い結果を期待していたのだがね」と、ミハイロビッチに釘を刺すのを忘れなかったという(エンポリ戦では勝利は飾ったものの、内容はひどいものだった)。

次ページ夏は連勝したミランだが、今回のデルビーでは大敗の危険も…。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事