“走り続けた”原口元気が果たした役割… 昇格3年目のU・ベルリンはいかにしてEL出場の偉業を成し遂げたのか【現地発】

2022年06月25日 中野吉之伴

「何度か頬をつねる必要もある」

加入1年目で不可欠な存在となった原口。(C)Getty Images

「当時2部リーグでこのクラブとサインをした時に、『将来こんなことが起こるよ』なんてのを誰かが言ったら、クレイジーだと思っただろうね。明日は自分達の感情を解き放って、エモーショナルにプレーをして、ファンの力で戦いたい」
 
 ウニオン・ベルリンのMFグリシャ・プレメルは2021―22シーズン最終節のホッフェンハイムとの試合前にそう語っていたが、その言葉通りチームは躍動感のあるプレーの連続で相手を一蹴した。プレメルも4分、右サイドを疾走してきた原口元気の見事なセンタリングをヘディングで合わせて先制点をマーク。最終的には5-1で大勝し、同節レバークーゼンに敗れたフライブルクをかわし、5位でフィニッシュすることができたのだ。

 キャプテンのクリストファー・トリンメルは「幸せなんてもんじゃないよ。今日でお別れになる選手もたくさんいたから、とても心が揺さぶられる。僕らが5位。言葉なんてないよ」と言葉を詰まらせた。

 オリバー・ルーネルトSDは「起きたことを信じるために、何度か頬をつねる必要もある。予想した専門家はいないだろう。正直に言えば私自身だってそうだ。こんな信じられないことに立ち会えるなんて」と試合後しばらくたってもまだ夢心地だった。
 
 チャンピオンズ・リーグ出場を狙っていたボルシアMG、ヴォルフスブルク、フランクフルトといったクラブが苦しむ中、ウニオンは力強く戦い続けた。それでも苦難があった。シーズン序盤に守備の要だったマルビン・フリードリヒがボルシアMGへ、冬の移籍市場ではそれまでエースとして活躍していたマックス・クルゼがヴォルフスブルクにそれぞれ移籍していったのだ。

 動揺がなかったわけではない。試合に勝てない時期もあった。でもそこで踏みとどまり、また勝点を積み重ねられるようになったのには、監督ウルス・フィッシャーの存在が間違いなく大きかった。

 56歳の指揮官は飛躍のシーズンをこう振り返っている。

「レシピがあるわけではないし、持ってもいなかった。助けとなるのは前を向くということだ。起こってしまったことに影響を及ぼすことはできないのだから。大事なのはそこから何をするかだ。どの選手も重要だというのを常に考えていた。そしてチームはそれを受け止めてくれた。チームは練習からそれまで以上に取り組んでくれるようになった。チームとして道を見つけたのだ。7試合で勝点4しか取れない時期もあった。重要だったのは、我々はマルビンやマックスの移籍を受け入れ、そこに一度も縛られることなくやってきたことだ」

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