本人もシャビもバルサ経営陣も残留を望んでいるF・デヨング。ではなぜ“売り”に出されているのか。番記者が裏側に迫る【現地発】

2022年06月20日 エル・パイス紙

去年の10月には売却に向けた不穏な動きに感づいていた

恩師テン・ハーグが率いるマンUなどが関心を示しているデヨング。(C)Getty Images

 フレンキー・デヨングは、困惑し、そして落胆している。理由はバルセロナが移籍の扉を開いたからだ。

「歴史に名を残すような選手になってほしいと期待されて入団した選手が、今や邪魔者扱いだ」。クラブ関係者はその心境を代弁する。

 デヨングが去就に不安を抱き始めたのは、夏の移籍市場のオープンの時期が近づくよりももっと前のことだった。彼に近い情報筋によると、去年の10月には売却に向けた不穏な動きに感づいていたという。デヨングのことを特に気にかけていた当時の監督、ロナルド・クーマンはもちろん反対し、現指揮官のシャビもクラブの方針に納得していない。
 
 そんななか、クラブ内でデヨングの売却を強力にプッシュしているのが強化部だ。彼らの言い分はこうだ。「ファンの間で最も期待値が高いカンテラーノを売却するわけにはいかない。では彼らを除いてチーム内で市場価値が高い選手は誰なのかと問われれば、それがフレンキーだった。もちろん彼はベストプレーヤーの1人だ。でも現実を見て、優先順位をつけると、そういう決断になった」

 デヨングの移籍が成立した場合に備えて、強化部が後釜のトップターゲットとして照準を定めているのがカルロス・ソレール(バレンシア)だ。しかし問題は、肝心のシャビ監督がこのアイデアに乗り気ではないばかりか、経営陣にとってもデヨングの売却は必ずしも優先度が高い案件ではないことだ。

 関係者が内情を説明する。「目安は7000万ユーロだ。それ以上の金額で売却できない場合は、クラブは不利益を被ることになる。まだアヤックスへの移籍金の支払いが完了していないし、減価償却も終わっていない。だから7000万ユーロを超えることが前提になる」。

 現在、デヨングの動向を注視しているのが、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、パリ・サンジェルマンといったクラブだ。しかしこの中でオファーを提示しているのはユナイテッドだけで、内容は6000万ユーロ+インセンティブ1000万ユーロ。ちなみにバルサが2019年に獲得するために投じた資金は、7500万ユーロ+インセンティブ1100万ユーロだった。

 とりわけ熱心なのが新監督に就任したエリク・テン・ハーグだ。2人はアヤックス時代に監督、選手だった間柄だった。テン・ハーグは直接電話をかけ説得に当たっているが、かつての愛弟子の心を動かすことはできていない。先日もデヨングは「選手としていろいろなチームが興味を示してくれるのは光栄なことだ。でも僕は世界最大のクラブに在籍していることに満足している」と残留希望を明言。さらに強化部から移籍を迫られているにもかかわらず、「今のところは何のニュースもないよ」と一蹴している。

次ページシャビの監督就任を境に途中交代させられる機会が増えたが…

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事