EL制覇の原動力となった鎌田大地、忍耐と地道な成長の5年間。「エリートでない分、我慢できた」

2022年06月18日 中野吉之伴

自分と向き合うことを恐れない

5ゴールを挙げてEL制覇に貢献した鎌田。(C)Getty Images

 フランクフルトのヨーロッパリーグ(EL)優勝に貢献した鎌田大地は、この大会で5得点を挙げ、得点王ランク4位の戦績を残した。「ミスターヨーロッパリーグ」と呼ばれるほどになった25歳には、常に自分と向き合い、課題に散り組み、成長し続けていた物語がある。

「1シーズン通じてプレーする、そして何シーズンもプレーするというのが一流の選手」

 同僚の長谷部誠が鎌田についてそのようにコメントしていたことがある。数試合すごいプレーをできるだけではダメ。1シーズンだけ好調なのでもダメ。どんな選手でもどんなチームでも苦しい時やうまくいかないときがある。一流の選手というのはそんな時でも、いやそんな時だからこそ自分のパフォーマンスをさらに高め、チームを引っ張れるだけのことをやれる選手をいう。鎌田にはそれだけの資質があるというメッセージでもあるのだろう。

 フランクフルトが鎌田を獲得したのが17年夏。開幕直後は当時のニコ・コバチ監督に重用されていたが、ブンデスリーガでまだ実力を発揮することができず、その後ベルギー1部のシント=ドロイデンへレンタル移籍。ここでプレー機会を得て、少なからず欧州サッカーになれたことが飛躍のきっかけとなった。

【動画】鎌田がヨーロッパリーグ準決勝で決めた値千金の決勝ゴール
 2018-19シーズンにフランクフルトへ復帰するとそれから3シーズン、基本的には中心選手として活躍をしている。だが、右肩上がりにうまくいっているわけではない。メンバーを外される時期もあったし、思うようなプレーができない試合もあった。

 鎌田は自分と向き合うことを恐れない。それこそコロナ前で毎試合のようにミックスゾーンで話を聞けていたころは、毎試合のように自分のやるべきことについて話してくれていたし、その次の試合には修正・調整した姿を見せてくれていたものだ。

 フィジカルコンタクトに強くなり、長い距離を走れるようになった。ゴール前に顔を出すだけではなく、自分を経由させることでチームのチャンスメイクに絡むようになった。攻撃だけではなく守備の強度を高めていけるようになった。

 球際でパスコースを切るだけではなく、身体を寄せてボールを奪いきれるようになった。トップ下のポジションだけではなく、サイドでもトップでもインサイドハーフでも自分のクオリティを出せるようになった。
 

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