就任後8勝1分け、日本とW杯で対戦するドイツを変えた名将の手腕。19歳“愛弟子”の抜擢でポジション争いも激化【現地発】

2022年06月04日 中野吉之伴

ロシア・ワールドカップではグループステージ敗退

EUROの後、ドイツを上昇気流に乗せたのがフリック監督だ。(C)Getty Images

 過去4度のワールドカップ優勝を誇るドイツ代表は、カタール・ワールドカップでどこまで行けるだろうか。18年ロシア・ワールドカップではグループステージ敗退、昨夏のEURO2020年では決勝トーナメント1回戦でイングランドに敗れるなど、最近はビックトーナメントで少し元気がない。

 そんなドイツ代表に再び活気と希望をもたらしたのが、バイエルンを6冠に導いたハンジ・フリックだ。昨年8月に就任すると、そこから8戦8勝。ワールドカップ出場もヨーロッパで最も早く決めている。

 3月の代表戦では、本戦に向けて、選手選考に目を光らせた。26日のイスラエル戦(2-0)を前に「このチームで重要になれるというクオリティを誰が持っているのか、というのを見ていく」とコメントしていたフリックが、試合内容に満足したのが29日のオランダ戦だった。

 結果こそ1-1の引き分けで就任9戦目で初めて勝てなかったとはいえ、それまでの8連勝という結果以上に、世界的トップレベルにある強豪を相手に内容のある試合で引き分けたということがドイツ・メディアから高く評価された。
 
「サッカーをプレーしようとする両チーム同士の非常にいい試合となった。ファンは試合を楽しんでくれたことだろう。後半に2-0としなければならなかった。1-1としたあとオランダはプレッシャーを高めてきたが、それに対抗することができた。インテンシティは非常に高かった。満足している。我々はとても勇敢だった」

 フリックはこのように試合を振り返っていたわけだが、主軸選手のCBニコラス・ジューレ、MFヨシュア・キミッヒとレオン・ゴレツカ、オフェンス陣のマルコ・ロイス、セルジ・ニャブリ、カリム・アデイェミ、ヨナス・ホフマン、フロリアン・ビルツを様々な理由で欠きながら、内容的に納得のいく試合運びができただけに、収穫は大きいといえる。

 CBではフライブルクのニコ・シュロッターベックがポジティブな驚きをもたらした。1対1の強さ、空中戦での安定感に加え、ボールを持った時のクレバーなビルドアップはここ最近のドイツ代表にはなかったものだっただけに、面白い存在となりそうだ。左SBでアピールしたのはホッフェンハイムのダビド・ラウム。攻守に躍動し、特にタイミングのいい攻め上がりとセンタリングの質で攻撃にバリエーションをもたらしていた。
 

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