なぜ神戸内定を早々に決断したのか? かつては「自信がなかった」筑波大MF山内翔の古巣への並々ならぬ想い

2022年05月03日 安藤隆人

トップ昇格を目指し全力を尽くしたが…

大学サッカーで大きく成長した山内。「育ててもらった筑波大のために全力を尽くしたい」。写真:安藤隆人

 筑波大のMF山内翔のヴィッセル神戸内定が発表されたのは、今年の3月31日。その翌日、彼は大学3年生になった。

 近年、大学生の内定決定のスピードは早まってきているが、その中でもかなり早い部類に入るだろう。屈強なフィジカルを駆使した守備と、素早い攻守の切り替えからの展開力を持つ大学屈指のボランチは、なぜ早く決断を下したのか。

 4月30日に行なわれた関東学生リーグ1部・第5節の拓殖大戦で、筑波大は2−0で勝利し、今季リーグ初勝利を手にした。この試合で今季リーグ初ゴールも叩き出すなど、勝点3獲得に大きく貢献した山内に、その真意を聞いてみた。

「高校の時からヴィッセルのユースでやっていたのですが(中学時代はヴィッセル神戸伊丹U-15でプレー)、その時はトップに上がるために全力を尽くしていました。上がれなかった時はかなり悔しかったですが、僕がこの筑波大を選んでからもヴィッセルのスカウトの人たちは、タイミングが合う時は必ず見にきてくれたし、声をかけてくれた。

 1年生のデンソーカップチャレンジ(2021年3月開催)が終わってからは頻繁に練習参加もさせてもらって、ヴィッセルというクラブが僕のことを思ってくれていると、ひしひしと感じました。練習に行くたびにヴィッセルでプレーしたいという気持ちが日に日に増していったことで、早めに決めました」

 神戸U-18時代には、U-16日本代表、U-17日本代表にも選ばれ、U-16アジア選手権(マレーシア)や2019年のブラジルU-17ワールドカップにも出場するなど、この世代では注目の存在だった。一方で、トップチームでは18年にアンドレス・イニエスタ、翌年には山口蛍が加入。名手が次々と加わり、山内が務めるボランチやトップ下は激戦区のポジションに。こうした影響もあり、トップ昇格は見送られた。
 
「昇格できないと伝えられた時は本当に悔しかったですけど、あの豪華なメンバーの中で自分が中心選手になってやっていく自信ははっきり言ってありませんでした」

 それでも、山内の心の中には神戸に戻りたいという気持ちが強かった。

 いつか自信をつけた状態で、あの豪華絢爛なメンバーの中でポジションを掴みたい。その目標と同時に、早くから練習参加を続けたことで、徐々に「世界的な選手や日本トップレベルの選手たちとトレーニングやコミュニケーションを重ねられるこの環境こそ、自分が伸びるベストな環境なのではないか」と考えるようになったという。
 

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