「命賭けでやってきた」。淡路島で変貌を遂げたMF日髙光揮。ヴィッセルで大輪の花を咲かせる準備を着々と

2022年04月01日 加部 究

「1日トレーニングへ行くだけで成長を実感」

神戸でプロキャリアをスタートさせた日髙。「いつチャンスが来ても活かせるように最高の準備を心がけていきたい」と意気込む。写真提供:相生学院高

 プロ選手の育成を標榜し3年前にスタートした相生学院高校(発足当時は神村学園淡路島学習センター)サッカー部の一期生から、遂にJ1プレーヤーが誕生した。

 ヴィッセル神戸が同校の日髙光揮の獲得を決めたのは、卒業式も終えた3月末。すでに同じ相生学院サッカー部の一期生では、福井悠人がJ3のカマタマーレ讃岐で、山崎遥稀はドイツ(アレマニア・アーヘン)へ渡りU-19のブンデスリーガで戦い始めていた。だが唯一進路が未定だった日髙が、土壇場で最大の朗報をもたらすことになった。

 実は日髙の神戸での練習参加は延べ3週間ほど続いた。高校在学中には全国大会も未経験だったので、さすがに当初は「レベルの高さに驚いた」という。とりわけアンドレス・イニエスタの凄さは異次元だった。

「マッチアップしても、何手も先を読み切っていてボールを動かしたり、それほどスピードが速いわけではないのに緩急で抜き去ったり、サッカーを極めている感じでした。ボール奪取も何度か試みたけれどダメでした。1度高いボールを頭で突こうとして『これは奪えた』と思ったら、あっさりとシャペウ(浮かせて外す)でかわされた。強いて挙げれば、守備練習の時にSBからアンドレスへ渡るボールを読んでパスカットしたくらいですね」

 キャンプ中には、慣れない右インサイドハーフにも挑戦し「初日は戦術が理解できず、いろんな選手に聞いて回った」が、右後方から酒井高徳の神のような声が届いて来た。

「後ろに入れば安心できる方で、一言一句が重くコーチングが的確。2日目からは徐々に良くなり、少しずつ信頼を掴めたと思います」

 こうして国内では究極のレベルの中に身を置く日々は、18歳のMFにとって最良の成長促進剤になった。

「1日1日のトレーニングで、学べること、吸収できることがたくさんありました。1日トレーニングへ行くだけで成長を実感できたほどです」
 
 相生学院で最上級生になってからは、活動拠点の淡路島を離れることが多かった。社会人や大学のチームを皮切りに武者修行の連続で、Jクラブも「5~6チームは練習に参加させて頂いた」という。

「最初はまったく通用しませんでした。でも少しずつスピードや強度にも馴れ、昨春頃に地域リーグのクラブで練習した時には手応えがあり、次にJ3のクラブでも『案外やれるな』と。そうやっていろんなチームでプレーしながら伸びてきたんだと思います」

 通信制だからこそ可能な新しい育成方法と言えるかもしれない。

 大阪出身で地元のFCスエルテからガンバ堺ジュニアユースに進むが、ユースへの昇格は叶わなかった。小中学生時代のトレセン仲間がユースへ進み、遠い存在になっていく気がしていた時に、相生学院へと繋がるプロジェクトの発足を知り入学を決める。「直感だった」そうである。
 

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