予選で圧巻の9ゴール!36年ぶりのW杯出場を決めたカナダ代表の若きエース、デイビッドとは何者か【W杯の必見タレント】

2022年03月28日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

昨シーズンはリーグ・アン制覇の原動力に

爆発的なスピードにボールテクニックを併せ持ち、味方のゴールをアシストするラストパスも魅力だ。 (C)Getty Images

 リーグ・アンのリールに所属する22歳のライジングスター、それがカナダ代表を36年ぶりのワールドカップ出場に導いたジョナサン・デイビッドだ。辺境カナダでの知られざるルーツ、欧州でのキャリアを辿りながら、カタールW杯の主役候補のサクセス・ストーリーに迫る。
 
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 2000年1月14日の生まれのジョナサン・デイビッドは、22歳になったばかりのライジングスターだ。

 昨シーズンにベルギーのヘントからリールに移籍すると、チーム2位の13ゴールをマークしてリーグ・アン制覇の原動力となった。パリ・サンジェルマンから首位の座を奪い返した31節の決勝弾に、15年ぶりの戴冠を手繰り寄せた最終節アンジェ戦の先制弾と、重要なゴールを連発した終盤戦はまさにエースの働きだった。

 爆発的なスピードにボールテクニックを併せ持ち、ポジショニングのセンスが光る。「ピッチのどこにいるべきか、ちゃんと分かるプレーヤーだ」と自分でも胸を張る。ゲームの流れをよく理解し、味方のゴールをアシストするラストパスも魅力だ。

 生まれはニューヨークのブルックリン。ただ、アメリカで過ごしたのは生後3か月ほどで、その後は両親の母国ハイチに戻って首都ポルトープランスで育った。そして6歳になったとき、一家はカナダに移住した。首都オタワが新しい故郷になった。

 カナダといえばアイスホッケーがナショナルスポーツ(国技)だ。ジョナサン少年も氷上でスティックを持ち、仲間とともにパックを追った。しかし、本当に興味があったのはサッカーだった。スティックを扱うより、足でボールを扱うほうが断然、巧かった。夢はヨーロッパでプロサッカー選手になること。いつかカンプ・ノウのような大きなスタジアムで、ティエリ・アンリのように疾走し、華麗にゴールを奪う自分の姿を夢想していた。
 
 10歳で地元クラブのグロスター・ドラゴンズに入って本格的にサッカーを始め、11歳でより規模が大きくレベルも高いグロスター・ホーネッツへとステップアップした。ホーネッツもアマチュアクラブだが強化部門があり、そこでテクニカルディレクター(TD)を務めていたマイク・ラノスは、ウェブメディア『First Time Finish』で当時を振り返ってこう語る。

「彼の小学校の先生から電話があってね。とんでもない4年生がいると。その通りだった。あんな10歳は見たことがなかった。すぐにうちのクラブで預かることに決めたよ」

 ホーネッツでメキメキと頭角を現わし、カナダ・サッカー協会の強化プログラムにも選ばれ、加速度的な成長を遂げていった。

 その成長を語るうえで、見逃せない重要なファクターが、カナダならではの特殊な環境だ。

 雪に閉ざされる冬の間は、屋外で練習ができない。地域にはいくつか屋内フィールドがあったが、野球やアメリカンフットボールなど他競技と共用しなければならず、フルコートは使えない。ハーフコート、あるいは3分の1、6分の1という狭小スペースでのミニゲームを通じて磨かれたのが、足下のテクニックとプレースピードだ。ボールを失わない繊細なファーストタッチに、瞬時の判断力と針の穴を通すようなパスの精度を身につけた。
 

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