名波体制2年目のカギは原点回帰とカメレオン戦法。松本山雅、開幕戦ミラクル逆転劇はJ2復帰への光明となるのか? 

2022年03月14日 元川悦子

1月下旬の和歌山合宿で猛烈な走り込みも

開幕戦の試合終了間際、決勝弾を叩き出した外山。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 2021年は7勝13分22敗の勝点36でJ2最下位に沈み、クラブ史上初のJ3降格の憂き目に遭った松本山雅。反町康治監督(現日本サッカー協会技術委員長)時代の2019年にJ1に参戦していたチームがわずか2年で2階級ダウンという厳しい現実を突きつけられ、2022年からのチーム再建が大いに注目されていた。

 クラブは2021年6月から指揮を執っていた名波浩監督の続投をいち早く決定。佐藤和弘や前貴之ら昨季主力の流出を阻止したうえで、復帰組のパウリーニョや小松蓮、新戦力のビクトルら新たなメンバーを補強。コーチングスタッフも複数の入れ替えを行なった。
 
 さらに、強化体制も変わった。まず昨年末に加藤善之副社長兼GMが退任。クラブOB・鐵戸裕史部長をトップとする編成部にTD職を新設し、横浜F・マリノスや名古屋グランパスで長年強化に携わった松本出身の下條佳明氏を抜擢。豊富な経験やネットワークを生かしながら鐵戸部長をサポートする形へとシフトしたのだ。

 13日のJ3開幕戦・カマタマーレ讃岐戦でも神田文之社長、鐵戸部長、下條TDが揃って試合を上から視察。意思疎通を図る場面が頻繁に見られ、以前よりも風通しのいい組織になった様子だ。

 こうした改革に現場も呼応。指揮官は1月下旬からの和歌山での1次合宿で凄まじい走り込みを実施。シーズンを通して走り抜ける体力強化を行なったという。2月中旬からの鹿児島2次合宿では実戦形式に取り組んだが、コロナ陽性者が複数人出て、練習試合が中止になるなど、アクシデントに見舞われた。

「今回のスタメンで開幕前に90分こなしているのは常田(克人)、佐藤、米原(秀亮)、横山(歩夢)の4人だけ。ゲームコンディションが整わない中、難しい入りになった」と名波監督も苦しい台所事情を口にしていた。

 実際、この日の序盤は讃岐に主導権を握られた。昨年9月26日のギラヴァンツ北九州戦を最後に11試合も公式戦勝利から遠ざかっている山雅は自信を持った入りができず、相手の迫力に押され、不用意なミスが目立つ。28分には米原のパスをカットされ、鋭いカウンターからまさかの失点。昨季J2で71失点という悪夢を想起させた。

 それでも、キャプテンマークを巻いた攻守の要・パウリーニョを中心に立て直し、徐々にペースを引き戻す。プロ2年目の横山も持ち前のスピードと推進力で引っ張り、チームに活力を与えた。その19歳FWが前半終了間際に佐藤の右CKから見事なヘッドで同点に追いつき、なんとか1-1で折り返せたのは、大きな朗報と言っていい。

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