Jリーグのジャッジが変わった理由。扇谷健司副審判委員長に訊く“改革”の真相

2022年01月13日 江藤高志

「反則じゃないものを反則にするのはやめよう」

扇谷健司副審判委員長。Jリーグのジャッジの変化などを語ってもらった。

 近年、リーグ全体の反則ポイントが減少傾向にある。ボールの保持を得意とするチームが増えた点がその一因と考えられるが、それとともに原博実Jリーグ副理事長が掲げる「フェアでタフでエキサイティング」なサッカーの呼びかけが、選手やレフェリーに浸透した部分もあるのだろうと考えている。

 本稿は、原副理事長への取材に続く第2弾として、扇谷健司副審判委員長への取材をベースにどういった取り組みが行なわれてきたのか考えてみる。
 
 扇谷健司副審判委員長が現職に就任したのは2020年のこと。当初、VAR導入元年とされていたシーズンを前に扇谷副委員長は、Jリーグ関係者に次の言葉を伝えたという。

「反則じゃないものを反則にするのはやめようっていう所を、まずリーグに伝えました」

 これは扇谷副委員長からの、審判員への戒めの言葉であり、Jリーグ側への呼びかけでもあった。

「2020年に入る前に、J1からJ3までの全部のPKをチェックしました。ちゃんと見ていくと結構な数、言い方は悪いですが、エラーしているよと。つまり、本来取られるべきものが取られてなかったり、取る必要がないものが取られたりというのが現状としてありました」

「反則じゃないものを反則にするのはやめよう」との呼びかけについてはJリーグ側にも賛同してもらえたのだという。この場に出席した原副理事長、黒田卓志フットボール本部長らからは、次のような言葉が出ていたという。

「リーグはリーグでもっと選手が、少しぐらいの反則は受けても……。つまり、選手が反則をもらいにいくとかではなくて、例えばプレミアリーグなどを念頭に、倒れてもすぐ立ち上がって次のプレーに移るとか。そういうサッカーをしたいとの思いがあったんです」

 つまり誤認で吹かれたPKは、レフェリーのミスであるのと同時に、選手側がPKを貰いにいった結果でもあるという認識がJリーグ側にあったのだという。この状態を是正させるべく、フェアでタフでエキサイティングなサッカーへの変貌が議論され、その方向で認識のすり合わせができたのだという。

「リーグとしては原さんを中心に、タフに、倒れてもファウルされても続けるんだということと、我々としては本来、取ってはいけないファウルは、反則じゃないものを反則にするなって言う、両方のメッセージがちょうど合致したというか。そういうところがスタートでした」

 

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