【岩本輝雄の目】浦和×広島の「戦術解析」&「キーマン診断」

2015年07月21日 岩本輝雄

浦和のCF+2シャドーの圧力が広島の3バックの混乱を誘う。

充実した戦いぶりを披露していた浦和において、ピンポイントのフィードやサイドチェンジを繰り出す阿部の存在感は大きかった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 浦和と広島の"首位攻防戦"。力のあるチーム同士の対戦だから、接戦になるかと予想していたものの、内容的にはホームの利を活かした浦和が優勢にゲームを進める展開だった。攻め込む時間帯も長かったし、良いサッカーをしていたと思う。
 
 ともに3-4-2-1を敷くミラーゲームで、両サイドはワイドに開きつつ、守備の時は5-4-1、攻撃の時は4-1-4-1になるなど、お互いに手の内は知り尽くしていたのだろうけど、今季ここまで負けなしの浦和の充実ぶりは明らかで、ゴールチャンスも数多く作っていた。
 
 もっとも、最初の10分間は広島がややペースを握っていた。その要因は2シャドーのひとり、柴崎の存在があったから。ボールを引き出すポジショニングに長けていて、左ウイングバックの柏との呼吸も抜群。推進力のあるプレーで前に行けるから、同サイドの浦和の関根も出てこられなかった。
 
 残念ながら柴崎は12分に負傷し途中交代となってしまい、彼がいなくなってからの広島は全体のバランスが崩れた印象で、そこを浦和につけ込まれてしまっていた。
 
 勢いを得た浦和は、攻撃の強度を上げる。広島の3バックに対し、CF+2シャドーが圧力をかけ、両ウイングバックの攻防も含め、5対5の状況を作り出す。後ろでは、3バックのセンターの永田と、2ボランチの阿部と柏木の3人がパスをつなぎながら様子をうかがい、3バックの槙野、森脇も高い位置取りで攻撃に厚みをもたらす。
 
 そうしたシチュエーションのなかで、特に目立ったのが、右ウイングバックの関根の飛び出し。対峙する広島の柏の背後を取って、斜めに走りながら相手の3バックに襲いかかる。
 
 広島の最終ラインは入ってくる関根に対応しようとするけど、彼らは浦和のCF+2シャドーも見なければならない。そこでの受け渡しがスムーズにできず、さらに押し込まれる格好で何度もピンチに陥った。
 
 そうした流れのなかで、浦和が先制するのは時間の問題だったかもしれない。ゴールを決めたのは、ハイパフォーマンスを見せていた関根だった。彼以外にも、阿部のピンポイントのフィードやサイドチェンジも広島からすればやっかいだったに違いない。
 
 逆に広島からすれば、先制を許したとはいえ、よく耐えたと言える。あれだけ押し込まれながらも、高木のPKを止めた林のビッグセーブもあり、前半を最少失点に抑えられたのは、ある意味でラッキーだった。

次ページ戦況を見極めた森保監督の“浅野投入”という好采配。

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