欧州有力国がより優位な状況に!? W杯、異例の11月開幕は大会にどんな影響を及ぼすのか?

2021年12月28日 加部 究

11月のカタールの気候は…

11月18日に開幕するカタールW杯。果たして“冬開催”は大会にどんな影響を及ぼすのか。(C) Getty Images

 2022年に開催されるカタール・ワールドカップは、11月21日に開幕。決勝は12月18日という異例の日程で行なわれる。果たして、今回の冬開催はこれまでの夏開催とどのような違いが生まれるのか? カタールでのW杯予選取材歴もあるスポーツライターの加部究氏の見解は?

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「ドーハの悲劇」として語り継がれるアメリカ・ワールドカップアジア地区最終予選は、1993年10月15日から約2週間で集中開催された。10月のドーハは、当時の日本では遭遇することのない強烈な陽射しに覆われていた。試合は全て夕刻以降に行なわれたが、それでも第1試合のキックオフ時点では、ムッとする不快な熱風がまとわりついた。

 だがそれから1か月間で、カタールの気候は急変していく。2008年11月19日には、岡田武史監督が率いる日本代表が、同じくワールドカップ最終予選でカタールとのアウェー戦に臨み3-0で快勝した。もちろんナイトマッチだったが、試合の経過とともに急速に冷え込み、持参していたダウンジャケットを着こんで安堵した記憶がある。また年末にはアブダビ(UAE)で開催されたクラブワールドカップを取材したこともあるが、日中は半袖で過ごせても、夜になると軽い冬支度が必要なほど気温は急降下した。

 これまで初夏に開催されて来たワールドカップは、何度も気候の影響を受けて来た。1982年スペイン大会では、比較的涼しい北部の都市で1次リーグを戦った国がベスト4を独占。逆に南端で暑さの厳しいセヴィージャで3連戦をした優勝候補筆頭のブラジルは、2次リーグで敗れた。また1994年米国大会は、欧州への中継の都合から日中炎天下で開催されたので、韓国と対戦した西ドイツの選手たちなどは数十㎝先を滑っていくボールにも足を出せないくらいフラフラになっていた。

 だが来年開催されるカタール大会は、序盤で13時、16時のキックオフが設定されているものの、グループリーグ(GL)も最終戦になれば18時、22時のみになり、その先は夕刻以降に行われる。ノックアウトステージも含めて大半の試合は、初夏に開催されて来た過去の大会と比べてもコンディションを憂慮する必要はなさそうだ。真冬の欧州に比べれば多少強度を保つのが難しくても、開催国の気候が優勝戦線に多大な影響を及ぼすとは考え難い。
 

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