「メッシを指導する難しさ? 一度も感じことはない」スカローニ監督が語るアルゼンチン代表の変化と内情【直撃インタビュー】 

2021年11月23日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

「メッシとともに戦える幸運を誰もが喜んでいる」

メッシを指導する重圧に押しつぶされることなく、時間をかけて信頼関係を構築。コパ・アメリカ制覇後、ともに喜びを分かち合った。 (C)Getty Images

 今夏のコパ・アメリカを制し、祖国アルゼンチンに28年ぶりとなるメジャータイトルをもたらしたリオネル・スカローニは、同時に国際大会で「メッシを初めて勝たせた監督」となった。

 11月には厳しい南米予選を突破してカタール・ワールドカップの本大会にチームを導いた指揮官の、貴重なインタビューをお届けする。

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セルヒオ・レビンスキ記者:コパ・アメリカでの見事な優勝、おめでとうございます。アルゼンチン代表にとっては28年ぶりのメジャータイトルですが、この快挙を達成できた最大の要因はなんだったのでしょうか。

リオネル・スカローニ:選手のだれもがチームのために尽くし、互いを理解し合った結果だと考えている。何度も困難なシーンに直面しながら、彼らはそのたびに歯を食いしばり、仲間同士で献身的に助け合い、それらを乗り越えていった。出場時間の多寡にかかわらず、ベンチの選手を含めた全員がその姿勢を持ち続けてくれた。すべてのメンバーの不断の努力が、長らく待ち望まれてきたコパ・アメリカのタイトルを手にする原動力になったんだ。私はあの大会で、フィールドプレーヤー全員をピッチに送り出している。このような短期間のコンペティションで、それは頻繁に起こることではない。

レビンスキ記者:過去のチームと比べて、なにが違ったのでしょうか。

スカローニ:最大の違いは、強い信念とグループの力、そして強運にあったと私は感じている。これまでも南米王者にふさわしいチームはたくさんあったが、2015年大会と2016年大会では、決勝に進みながらもチャンスを生かせず、無得点のままPK戦に持ち込まれた。そこで運に見放され、どちらも準優勝に終わっている。それが今大会は、重要なPK戦をモノにし(準決勝のコロンビア戦)、決勝ではアンヘル(ディ・マリア)が前半に素晴らしいシュートを決めてくれた。あのゴールによって選手たちの緊張がほぐれ、目に見えて動きが良くなった。実に重要なゴールだった。

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レビンスキ記者:ついにメッシが代表で主要タイトルを獲得しました。彼のようなスーパースターを指導するにあたって、難しい点があれば教えてください。

スカローニ:私自身は、難しさを感じたことなど一度もないよ。逆に、彼のような特別な才能を持った選手と同じ目標を持ち、それを成就できたことを誇りに感じている。きっとチームメイトも同じ気持ちだろう。彼がいるだけで、周囲の人間のモチベーションはぐっと高まるし、いざというときに拠りどころになってくれる真のリーダーでもある。そんな選手が自分のチームにいて欲しいと思わない監督や選手は、ひとりもいないだろう。われわれコーチ陣を含め、だれもがその幸運を喜んでいるよ。

レビンスキ記者:ロシア・ワールドカップのベスト16でフランスに敗れたあと、当時のホルヘ・サンパオリ監督と多くのスタッフは、早期敗退の責任を取って辞任しました。そんな中、アシスタントコーチのひとりだったにもかかわらず、あなたはチームに残るという決断を下しています。その理由を教えてください。

スカローニ:純粋に、代表で指導者としてのキャリアを築いていきたかったからだ。たしかにロシア・ワールドカップは失意の敗退に終わったが、私はチームの可能性を信じていた。そして自分のこともね。それまではアシスタントしか経験していなかったが、じきに監督になれると信じていたし、そのチャンスは思っていたよりも早く訪れた。それを逃すわけにはいかなかった。ロシア・ワールドカップの直後にスペインのバレンシアで開催されたU-20代表の大会で指揮を執り、優勝できたことも自信になった。今回のコパ・アメリカでさらなる成功を収めることができて、本当に嬉しく思っているよ。
 

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