「自分もやらないといけない」流経大柏MF高足龍、殊勲の2得点に秘められた実弟・善へのライバル意識【選手権予選】

2021年11月15日 松尾祐希

わずか2分での逆転劇

高足(22番)の2得点で市立船橋に逆転勝利を収めた流経大柏。写真:滝川敏之

 流通経済大柏に3年ぶりの出場権をもたらしたのは、誰よりも苦しんできた男だった。

 第100回全国高校サッカー選手権大会の予選において、最も過酷な争いと言われる千葉県予選。11月14日に行なわれた決勝は、9年連続となる流経大柏と市立船橋の顔合わせとなった。互いに日本一の経験を持ち、U-18高円宮杯プレミアリーグEASTに所属しており、全国レベルのビッグマッチと言っても過言ではない。毎年のように注目される大一番で、主役の座を射止めたのは流経大柏のMF高足龍(3年)だった。

 左サイドハーフで先発したアタッカーは、序盤から持ち前のスピードと技術を生かしたドリブルで攻撃の起点を作る。フリーランニングも効果的で大外を回ってサイドを抉る動きで、相手の目線をずらしてチャンスに絡んだ。

 前半29分に市立船橋の1年生FW郡司璃来にゴールを許し1点ビハインドのなか、キレのある動きを見せていた高足に、最初の見せ場が訪れたのは同35分だ。

 左SBの大川佳風(2年)が放った右CKがファーサイドに流れると、猛然と走り込んで右足を振り抜く。ボールは相手DFの股下を抜いて逆サイドネットへ。GKデューフ・エマニエル凛太朗(2年)のミスから生まれた失点を帳消しにし、試合を振り出しに戻した。

 伝統の一戦で生まれた値千金の同点弾。勢いに乗った高足は2分後にも決定的な仕事を果たす。同37分にFW川畑優翔(3年)が中央突破を図る。一度は相手に阻まれたが、流れたボールは右サイドのMF西岡亮哉(3年)へ。ここからグラウンダーのクロスをゴール前に入れると、ぽっかり空いたファーサイドのスペースに入ってきた高足が右足で逆転ゴールを奪った。

 わずか2分で奪ったふたつのゴール。高足の活躍で試合をひっくり返した流通経済大柏は、最後までリードを守り切って2-1で勝利を手にした。
 
 振り返れば、今季の高足は悔しい想いを何度も味わってきた。プレミアリーグでは13試合中9試合の出場で無得点。2回戦で姿を消した夏のインターハイでは2試合とも途中出場で、絶対的なレギュラーとは言えなかった。

 今予選は調子を維持していた一方で結果を残せず、準決勝の専修大松戸戦では途中交代を余儀なくされる。焦りが大きくなるなか、さらに自身の心を掻き乱したのが、前橋育英でプレーする実弟・善の存在だった。一学年下の弟とは仲が良く、中学時代に所属したFC杉野Jrユースでもチームメイト。一番身近にいるライバルは夏以降に調子を上げ、2年生ながらスタメン出場の機会を増やしていた。しかも、選手権予選はここまで3ゴールを挙げている。弟の活躍は喜ばしい出来事だったが、本音を言えば少しだけ焦りもあった。

 だからこそ、決勝では結果を求めていた。「自分もやらないといけない。その想いがあったので、自分にとって刺激になっていた」(高足)
 

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