守護神・黒田海渡が背負う『赤き血のイレブン』浦和南の歴史と伝統。4年後にプロの舞台へ、リスタートを誓う【選手権予選】

2021年11月15日 安藤隆人

チームに安定をもたらした黒田の存在感

西武台との埼玉決勝で浦和南の守護神・黒田は、ビッグプレーを連発した。写真:安藤隆人

『赤き血のイレブン』として知られる伝統校・浦和南の選手権第100回大会出場への夢は、延長後半の失点で断たれた。

 選手権埼玉県予選決勝で西武台と対戦した浦和南は、自慢の堅守を武器に延長後半7分まで無失点を続けていた。その堅守の中心にいたのが183センチと屈強なフィジカルを誇る3年生の守護神・黒田海渡だった。

 西武台の鋭いサイド攻撃に対して、黒田は間接視野で中の様子を把握しながら、細かいステップで絶妙なポジションを取る。ゴール前に飛んでくるクロスに対しても、いち早く落下地点に入り込んで、両手をスムーズに伸ばし、いとも簡単にキャッチした。

 クロス処理だけではない。前半14分、西武台の鋭いカウンターからFW細田優陽と1対1になるが、シュートコースを冷静に読み取って、横っ飛びでキャッチ。弾いていれば詰めている選手がいただけにビッグプレーだった。
 
 さらに同38分には、ロングスローから決定的なシュートを浴びるが、右足一本で防ぐと、そのこぼれから展開され、ゴール前にロビングを上げられる。このボールを西武台のFW市川遥人がヘッドで合わせるが、これも黒田がコースを完全に読み切って地面すれすれのボールを横っ飛びキャッチ。抜群のパフォーマンスを見せた。

 坪井優太と戸部悠太のCBコンビも守護神を信頼してラインコントロールをしており、黒田の存在がチームに安定感をもたらしていたことは明らかだった。

 後半に入ってからもハイボールの処理の安定感は変わらず。後半40+2分には西武台の細田が、ペナルティエリア内をワンツーで抜け出し右足でシュートを放つが、両手でセーブしてことなきを得た。

 しかし延長後半7分、スローインからボールを受けた西武台のMF丸山実紀が、サイドを破ってゴール前にクロスを供給。ニアのスペースに飛び込んだDF安木颯汰が、これにドンピシャのヘッドで合わせると、鋭く叩きつけられたボールは懸命に伸ばした黒田の右手の先をすり抜けてゴール左隅に突き刺さった。

 黒田は同10分のセットプレーのチャンスでゴール前まで駆け上がったが、彼の思いも虚しくゴールはこじ開けられず、タイムアップを迎えた。
 

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