【コパ・アメリカ現地レポート】チリ、アルゼンチンを下し悲願の初優勝! 「4本のPK」に凝縮された勝因

2015年07月05日 熊崎敬

ロメロの心理を読み切って、A・サンチェスが逆を突く。

PK戦の末にアルゼンチンを破り、開催国チリが初優勝を果たした! (C) Getty Images

【コパ・アメリカ2015】
決勝
○チリ 0-0(4PK1) ●アルゼンチン
【PK戦】
チリ(先攻)|アルゼンチン(後攻)
【1】M・フェルナンデス○|メッシ○
【2】ビダル○|イグアイン×
【3】アランギス○|バネガ×
【4】A・サンチェス○

 120分の死闘でも決着がつかなかったファイナルは、PK戦の末に開催国チリに凱歌が上がった。チリにとっては1916年の大会創設以来、初の戴冠。百年の夢が結実したチリはいま、信じられない高揚感に包まれている。

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 チリはすべてを出し尽した。
 PK戦では巨漢ロメロのプレッシャーにさらされながらも、M・フェルナンデス、ビダル、アランギスが隅の隅を確実に撃ち抜いていく。
 
 勝利のキックを託された4人目のA・サンチェスは、それまでの3人とは打って変わって、タイミングを一拍外してロメロの跳んだ逆に緩いゴロを転がす。チリ国民は一瞬、狐につままれた気分になっただろう。そしてボールがゆっくりとネットを揺るがした瞬間、スタジアムとチリが爆発した。
 
 サンチェスの大胆なシュートは、PK戦の流れを冷静に見極めていたからこそ生まれた。
 チリは3人目までが思い切って隅に突き刺したが、ロメロも完全に読み切っていた。あと少しで手が届く、という思いが守護神の跳躍のタイミングを微妙に早めていく。その心理を読み切って、A・サンチェスは逆を突いたのだ。
 
 PK戦のチリは勇敢で冷静で、そして大胆だった。それは120分の戦いにも当てはまる。
 
 彼らは序盤から素早くパスをつなぎ、四方八方から味方が湧き出すチリ流の攻撃サッカーを繰り広げた。巷ではアルゼンチン有利という声も多かったが、心理的に守りに入らず、自分たちのいいところを堂々と押し出した。
 
 いまのアルゼンチンを相手に撃ち合いを挑むというのは、なかなかできることではない。このあたりのサンパオリ監督の手綱さばきは称賛に値する。
 
 一生に一度のゲームに、チリの選手たちは存分に自分たちを表現した。
 
 アランギスは至るところに出没し、次々とボールを狩り獲った。イスラは超人的なスタミナで右サイドを駆け上がる。不振が取り沙汰されたA・サンチェスは、アルゼンチンの名手を相手に何度も深い切り返しを決めた。
 
 そしてビダルは「キング」の称号にふさわしい、絶大な存在感を示した。膝を激しくぶつけながらも、疲れた表情をほとんど見せなかった。やはり、キングだった。
 
 そして、この試合のMVPは何といっても守護神ブラーボだろう。チリ守備陣はカウンターやセットプレーから、しばしばゴールを脅かされたが、巧みなポジショニングと鋭い反応でゴールに鍵を掛け続けた。PK戦も含めて、文句のつけようがない働きだった。

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