【審判員インタビュー|第1回】扇谷健司Jリーグ審判デベロップメントシニアマネジャーに訊くVARの成果と課題「余計な行為も見なくなった」

2021年10月31日 サッカーダイジェスト編集部

「オフサイドには“グレーゾーン”がある」

Jリーグ審判デベロップメントシニアマネジャーの扇谷健司氏。(C)JFA

「審判員」。サッカーの試合で不可欠ながらも、役割や実情はあまり知られていない。例えば、「審判員」と法を裁く「裁判官」を同等に語るなど、本質の違いを見かけることもあれば、「審判員にはペナルティがない」という誤った認識を持っている人も少なくはない。

 罰するために競技規則を適用しているわけではなく、良い試合を作るために競技規則を適用していく。それが審判員だ。

 そんな審判員のインタビューを、『サッカーダイジェスト』と『週刊審判批評』(株式会社ダブルインフィニティ)が前編と後編に分け、隔月で連載していく。第1回は、日本サッカー協会(JFA)審判委員会Jリーグ審判デベロップメントシニアマネジャーの扇谷健司氏にインタビューを行なった。

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――J1ではインパクトのある誤審は少ないと思います。VAR(ビデオアシスタントレフェリー)をうまく運用できている証拠でしょうか?

「コロナの影響で準備期間は短かったですが、審判員がしっかりと取り組んでくれて大きなトラブルなくシーズンを進められていると思います。ただ、多少の課題はあります。(VARの)チェックに少し時間がかかっていますよね」

――確かにアディショナルタイムが長くなる試合はいくつかありました。他に課題を挙げるとしたら?

「欧州のリーグ戦やEUROなどではVARのオフサイドチェックは3Dラインというハイクオリティなテクノロジーを使っています。ただ、Jリーグの場合は2Dラインです」

――3Dラインはフィールド上に引いた直線から、上方へ線を引いて細かい部分まで確認することが可能で、立体的にオフサイドを検証できる。一方、2Dラインは限られたカメラで確認するため、フィールド上にしか線を引くことができない。3Dラインよりは細部まで正確に判定できないということですね。

「はい。3Dラインは白黒つきますが、2Dラインには"グレーゾーン"があります。なので、副審が判定したオフサイドに対し、VARは『明らかなエラーの時のみ介入しましょう』という方向性を示しました。課題というよりは与えられた環境で進めていくという方向性ですね」
 

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