【松本】U-22代表の“主将”に期待の“新星”が勝負を挑む。ゴールが生まれた「あのワンプレー」の舞台裏と、そして新星の秘めたる想いとは?

2015年06月28日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

鮮やかなステップワークで完全に遠藤の逆を取る。

遠藤との1対1で鮮やかな足技を披露。完璧にかわすことはできなかったが、能力の高さと攻撃センスを存分に示したワンプレーだった。(C)Getty Images

 51分、センターライン付近でサイドに流れながら、喜山康平の縦パスを受け取る。ボールを足もとに収めて前を向いた前田直輝の前には、すでに遠藤航が少し腰をかがめながら守備のスタンバイを整えていた。

【J1 PHOTOハイライト】1stステージ・17節
 
 タッチライン際で対峙したふたり――前田が自慢の左足で軽やかにボールをまたぎ、足裏でボールを転がして前に押し出す。その鮮やかなステップワークに遠藤は完全に逆を取られたが、体勢をすぐに立て直し、外側から抜きにかかる前田を追い掛ける。
 
 それはほんの一瞬の出来事だったが、見応えのある攻防だった。7月1日のコスタリカ戦に向け、U-22代表に初めて選出された20歳のレフティが、同代表では腕章を託され、手倉森誠監督からも絶大の信頼を得る男に1対1の勝負を挑む。
 
 最終的には、前田の突破に対し、遠藤のサポートに素早く入った古林将太が、前田の出したパスをカット。撥ね返ったボールは遠藤に当たり、そのこぼれ球を拾った前田が、逆サイドでゴール前に侵入していく田中隼磨へスルーパスを通すと、守備に戻った菊池大介が田中をエリア内で倒してしまい、家本政明主審はPKの判定を下す。オビナがこれを確実に決めて、松本がリードを奪うことに成功した。
 
 前田のドリブル突破は、厳密に言えばオビナの先制ゴールに直接つながったわけではないが、しかし果敢な仕掛けがそのきっかけを作ったのは間違いない。田中へのスルーパスも「ハユさん(田中)が上がってくるのが見えた。イメージどおり」(前田)だった。
 
 遠藤からすれば不運だっただろう。チームメイトとの懸命な守備も、「(前田のパスが)誰かに当たって、(そのルーズボールが)俺に当たって、こぼれたところを拾われてしまった。それはちょっと、しょうがないというか、アプローチに行く間にやられてしまった」と悔やんだ。

次ページスプリント回数では4度、チームトップの数字を記録。

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