「壁は乗り越えられる」細貝萌が苦境の柏時代に吐露した想い。地元群馬に戻った35歳が導き出した答えとは…

2021年10月01日 佐藤亮太

自分のプレーに納得できなかった柏時代。「流れが来ていないんです……」

柏時代にも「壁は乗り越えられる」と想いを語っていた細貝。タイでの2年半を経て、自身の考えに変化はあったのか? 写真:サッカーダイジェスト

「必ず壁は乗り越えられる。チーム、スタッフ、家族、みんなの力を借りて乗り越えたい」

 9月24日、J2ザスパクサツ群馬に加入したMF細貝萌は会見でこう語った。この言葉には、これまでの細貝が詰まっていた。

――◆――◆――
J2リーグ最新順位表
「流れが来ていないんです……」
 2018年4月下旬、柏レイソルの日立台練習場。柏総合グラウンドに面したベンチで細貝はそう吐露した。見上げた空は細貝の心を現わすようにどんよりとした曇り空だった。

 細貝のいう『流れ』とは何か。

 05年、浦和レッズに加入した細貝は10年12月、ドイツ・レバークーゼンへ完全移籍を果たした。様々なチームを渡り歩くなか、時にケガに悩まされ、時にチーム事情に左右されながら、ボール奪取力とユーティリティさを武器に、小さなチャンスを手繰り寄せるように生き抜いた。

「良いときには何も考えなくても身体が動いた」
 これまでの鬱屈から解き放たれるような天衣無縫、自由闊達なプレー。日々の練習の成果、悩みの対価が細貝の示す『流れ』なのかもしれない。

 成功体験を得た細貝だが、17年に柏へ加入し、悩みの淵に落ちた。

 主に勝ち試合のクローサー的起用だった細貝だが、
「自分らしいプレーができない」
「試合に出ても納得できないプレーが多い」
「プレースタイルは合うはずなのに」
 チームの力になりたいのになれない歯がゆさを胸いっぱいに抱き、「ここまで流れが来ていない」と我が身を嘆いた。

 そんなとき、ヒントを求めたのは身近にいた先輩たちだった。
「高原(直泰)さん、(小野)伸二さんは自分と同じ年齢の時、何を考えてサッカーしていたんだろう」

 この時、細貝は31歳。自身が若手だった時、30代を迎えようとした浦和時代の先輩に思いを巡らせた。さらに「(本田)圭佑も岡崎(慎司)もみんなやっていますもんね」と北京五輪でともに戦った彼らを励みに突破口を求めた。

 考えては悩み、試しては考える。そうやって戦ってきた。

「そりゃ、いっぱい壁はありましたよ。でも越えられなかった壁はなかったですから」

 たとえ八方ふさがりでも必ず流れを引き寄せた。この柏でも最後には力になれる、そう信じていた。

 しかし、状況が変わらなかった。
 

次ページ35歳になった細貝が出した答えとは――

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事