W杯『2年に1度』は本当にサッカー界のためになる? 日本にとっては“好都合”な改革案だが…欧州や南米の反発も当然

2021年09月28日 加部 究

競技の普及は大陸間の格差を解消する

2年に1度のW杯開催案には、前回大会で優勝したフランス(写真)など欧州勢や南米勢は反発しているが…。(C)Getty Images

 アーセン・ヴェンゲル氏や本田圭佑らも賛成の意志を示したワールドカップの"2年に1度"開催案。賛同する意見がある一方、欧州や南米などはボイコットする意向を示しているが、では実際、日本サッカーにはどのような影響があるのだろうか。そのメリット・デメリットについて、スポーツライターの加部究氏に見解をうかがった。

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 競技の普及は、格差を解消していく。本来パイが広がるのだから格差も比例しそうなものだが、そうならないことは歴史が証明している。

 ワールドカップの出場枠は、1978年アルゼンチン大会までが16か国で、さらに24か国枠の4大会を経て1998年フランス大会からは現状の32か国が定着。2026年大会からは48か国に膨れ上がる。

 16か国時代は、欧州、南米と他大陸との格差は歴然としていた。例えば1978年アルゼンチン大会で2次リーグに進んだ8か国は、欧州5か国と南米3か国で、北中米でお山の大将を満喫していたメキシコは、西ドイツ(当時)に0-6で大敗。その4年前には、アフリカ代表のザイール(コンゴ民主共和国)が3戦全敗で得点がなく、計14失点の憂き目にあった。また最初に24か国に増枠された1982年スペイン大会でも、エルサルバドルがハンガリーに2桁失点(1-10)を喫している。
 
 だが出場枠が32か国に増えると、徐々に大陸間の格差が縮まり、極端なワンサイドゲームが生まれる確率は減少した。

 ボスマン判決の影響で他大陸の選手たちの欧州進出が顕著になり、多彩な代表チームが経験を重ね、さらに情報伝達スピードの加速も拮抗を促進した。24か国時代まで出場ゼロだった日本は、32か国時代の到来とともに大会の常連となり、3度もベスト16に進出する躍進を遂げている。

 前回大会では、開幕早々ドイツが40年前に大勝したメキシコに敗れたように、もはや北中米、アフリカ、アジアなどの代表との対戦でも、確実に勝ち星を計算できる国はなくなりつつある。

 同様の現象は高校選手権でも見られた。地域ごとの代表が参加していた頃には、御三家(静岡、埼玉、広島)と他地域との格差が顕著だったが、全都道府県の代表が参加するようになると急ピッチで解消され、どの地域にも全国区の強豪校が生まれてきた。本大会では大差の試合の代わりにPK戦決着が幅を利かせている。

 こうした流れを見ても、ワールドカップの隔年開催は発展途上国にはありがたい話だ。逆に欧州や南米が反発するのも当然で、とくに欧州はボスマン判決を追い風にクラブレベルでは世界のタレントの一極集中を実現し、代表レベルでも大陸内でスケジュールを固めて排他性を強めようとしてきた矢先だけに、FIFAの横槍にファイティングポーズを取るのも頷ける。
 

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