「生き方そのものが問われている」。SNSでの誹謗中傷について、村井チェアマンの傾聴すべきメッセージ

2021年09月27日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

大事なのは何事にもリスペクトの気持ちを持つこと

SNSでの誹謗中傷について、村井チェアマンが示した独自の見解とは? 写真:Jリーグ

 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での誹謗中傷は大きな社会問題で、Jリーグでも"なりすまし被害"が多発。他方、コロナ禍におけるスタジアムでの感染対策も引き続き気を緩められない状況にある。こうした事象について独自な捉え方をしていた村井チェアマンのメッセージは、傾聴に値するものだ。

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 世界の頂点に立つアスリート、過酷な試練を乗り越えてきた選手さえ、たった一行の書き込みによって心を砕かれてしまう。それくらいの恐ろしさ、影響力が今のSNSにはあります。

 注視すべきは、インターネットでの誹謗中傷が凶悪な悪人によって頻発しているわけではなく、一般市民によって仕掛けられるケースがある点です。普通の人間が不用意な発言で相手を苦しめる。ここが、この問題の難しいところです。

 世の中に不平不満を持った人たちがそのストレスをぶつけたものが、もしかすると「SNSでの誹謗中傷」と言えるかもしれません。ただ、それも私の憶測であり、正確な情報ではないのです。正直、この問題の背景にある闇は深いです。

 コロナ禍の現状もあって、社会全体がストレスを抱えている状態です。国民一人ひとりがストレスの発信源になって、しかも顔が見えないままSNSで発言できる状態にあります。怒りの矛先は行政、企業、個人と様々で、言わばカオスなのです。闇が深い原因のひとつはそこにあり、だからこそ短期的に解決できる問題ではないと認識しています。

 もちろん黙殺するつもりなどありません。Jリーグでも"SNSでのなりすまし"(サポーターを装ったフェイクのアカウントで人種差別などを投稿)が話題になりましたが、これらは犯罪行為なので撲滅するような対応をとっていきます。
 

 東京五輪でも、SNSでの誹謗中傷は大きな問題になりました。ただ、SNSとは無関係の世界でも無自覚で人を傷つけるケースがある事実を知る必要があります。誹謗中傷は日常生活にも潜む刃物みたいなものです。サッカーの試合でも、ブーイングの仕方を間違えれば予想外の事態に発展する可能性がありますよね。

 大事なのは、何事にもリスペクトの気持ちを持つこと。それがないと不用意な発言が無意識に出てしまいます。大袈裟かもしれませんが、SNSでの誹謗中傷が目立つ世の中では我々の生き方そのものが問われている気がします。望ましいのは、互いをリスペクトしながらオープンな場で正々堂々と戦うことだと考えています。なにも、戦争や紛争がいいと言っているわけではありません。規模の大きい話ではなくて、ただ単純にひとつのルールの中でフェアに競い合う、それを主張したいだけです。ある種、スポーツはメッセージ性の強いものになると思います。

 東京五輪でも、選手間でリスペクトする態度はかなり見られましたよね。悔し涙に暮れる敗者がそれでも勝者に賛辞を惜しまなかった姿を私もテレビを通して何度も目撃しました。正々堂々とプレーする、思いっきりぶつかる、フェアに戦うことの大切さを改めて教えてもらった大会でもありました。正々堂々──。これは、人として忘れてはいけない精神だと強く感じます。

 

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