背中に目がある!? 熟練の守備センスを披露した青山敏弘は柏戦の“陰のMOM”だった【広島】

2021年09月19日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

先制直前の展開でもベンチから「ナイス、アオ!」という賛辞の声が

柏戦で先制点をアシストした青山敏弘。出色のパフォーマンスを披露した。写真:滝川敏之

「青山からはあのタイミングであのパスが出てくる」

 広島の城福浩監督がそう称えれば、得点者のドウグラス・ヴィエイラも「アオからはああいうボールがくる」と同じように信頼を寄せる。柏戦で先制点を演出した青山敏弘のアシストは、まさに"らしい"パスだった。

 30分、中盤の右側でハイネルから横パスを受けた青山は、ワントラップでボールを前に置いて顔を上げる。そして相手のボランチとシャドー、2枚のCB、ふたつの間を通す絶妙なスルーパスを送り、走り込んだD・ヴィエイラのゴールをアシストした。

 針の穴を通すようアシストはもとより、先制直前の展開でもベンチから「ナイス、アオ!」という賛辞の声が聞こえた。それは自陣右サイドのスローインの時で、前線からプレスをかけてきた柏の守備にハマリかけたが、藤井智也とエゼキエウを生かしながら狭い局面をパスで打開したシーンだった。
 
 指揮官や選手から信頼される青山の豊富な経験は、やはりモノが違う。それは、守備でも表現されていた。具体的にはポジショニングだ。

 柏が最終ラインからビルドアップしている時、青山はしきりに首を振る。ボールホルダーと自身のマーク(相手のボランチ)はもちろん、敵のCFである瀬川祐輔を視界に捉えるようにしていた。

 そしてボールホルダーが瀬川に縦パスを入れようとすれば、青山はすっと立ち位置を変えてCFへのパスコースを消す。その素振りを見た相手が初動を止めて攻撃を組み立てなおせば、背番号6は自身のマークをケアできて、なおかつ瀬川へのパスを遮れる中間ポジションを取り直す。コツコツと繰り返し続けた。

 結果的には、ほとんど縦パスを入れられていないため、目立ちにくい動きではある。ただ、青山がいかに効果的な働きをしていたかは、柏の左CBで先発した古賀太陽の話を聞けば分かる。

「相手のボランチが自分たちのボランチに食いついてきた背中を狙いたいと話していましたけど、自分たちが望んでいたようなボールの配給ができなかった」

 パスコースが限られた柏の最終ラインは、やむなく空中に活路を見出した。しかし170センチの瀬川と対峙した広島の荒木隼人は186センチ。当然、後者がことごとく競り勝った。ミスマッチだったのは明らかなのに、「正直(ロングボールを)入れさせられていた」と、古賀が歯がゆい心境を明かしていた。

次ページ相手にとって嫌な青山のポジショニングは一朝一夕には身に付かない

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