エムバぺの持つ強靭なメンタル。マドリー移籍が流れた後、初のホームゲームで起きたブーイングは喝采に――。【現地発】

2021年09月13日 結城麻里

4ゴール中3ゴールに絡む大活躍

マドリー移籍が有力視されながらも、パリSG残留となったエムバぺ。ブーイングを物ともせず、結果で周囲の雑音を一蹴した。(C)Getty Images

 キリアン・エムバペの強靭なメンタルが、人々を驚愕させている。
 
 エムバペはこの夏、次々と心理的試練を経験した。契約更新を迫るパリ・サンジェルマン指導部から陰に陽に猛プレッシャーをかけられ、サポーターからも「天狗になっている」と批判された。
 
 次いでフランス代表として戦ったEUROで結果を残せず、スイスに敗れた試合のPK戦では最終キッカーを務めて失敗。以来、パリSGのホームスタジアム、パルク・デ・プランス(略称パルク)では、エムバペへのブーイングが出るようになった。

 メルカートが進むと、レアル・マドリー移籍をめぐる「連続ドラマ」がいよいよメディアを騒がせ始め、8月31日深夜、ついにこれが"流産"で幕引きに。さらに、ワールドカップ欧州予選に出場するや、9月1日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦(1-1)で右ふくらはぎを傷め、代表を離脱してしまった。
 
 しかし、パリで治療に入った22歳は、予想より早くピッチに戻ってきた。9月11日のリーグ・アン第5節クレルモン戦(4-0)。マドリー移籍が不成立となってから初めて、エムバぺがパルクに姿を現わした試合だった。

 コレクティフ・ウルトラ・パリ(CUP、ハードなサポーター集団)のメンバーは、「おそらく個人的な口笛はいくらか出るだろう。だが俺が聞いた噂では、(組織的には)何も予定されていない。とくにチャンピオンズ・リーグ(CL)の前はね」と予言していた。

 エムバペの名がスピーカーから流れる。すると案の定、ブーイングに包まれた。

 だが先発したエムバペは、20分ほど足慣らししたのちエンジンを上げ、アンデル・エレーラのゴール(31分)を生み出す。次いで自らもネットを揺らし(55分)、最後にイドリサ・ゲイエのゴール(65分)にも絡んだ。4ゴール中3ゴールに直接絡む大活躍だった。

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