【広島】「思考の天才」佐藤寿人が成し遂げた大偉業。ゴール量産の秘訣はデータベースにあり

2015年06月21日 中野和也

思考・研究の積み重ねが史上初のJ1・J2通算200ゴール達成へ。

1点目は左足、2点目は右足、3点目は頭。万能ストライカーたる所以をわずか10分間で証明した。 (C)J.LEAGUE PHOTOS

 「J1・J2通算200ゴール」――。佐藤寿人は16節の山形戦で、Jリーグ史上初となる前人未到の記録を打ち立てた。なぜ、彼がこれほど点を取れるのか。日本サッカー協会は総力を挙げて、このテーマについて徹底研究する必要があるのではないか。日本代表でも年代別でも、「点が取れる」ストライカー不足は顕著に現われているわけだから。
 
 確かに瞬間的なスピードはあるが、浅野拓磨の50メートル5.9秒という圧巻の速さほどではない。高さや強さも、豊田陽平(鳥栖)とは比較にならない。大久保嘉人(川崎)の強引さも、中村俊輔(横浜)のFKも、彼にはない。中山雅史のように黄金時代の磐田で戦ってきたわけでもなく、仙台と広島で2度の降格も経験している。
 
 それなのに、誰よりも点が取れている。この現象を「決定力」などと曖昧模糊とした言葉で片付けてしまっては、佐藤の後に続くストライカーは、出現しない。
 
 例えば、その研究心。昨季終了後、佐藤はサイド攻撃から点を取れていない現実を注視。Jリーグの全ゴール映像をスタッフに編集してもらい、クロスからのゴールパターンを徹底分析・蓄積したうえで、練習を積み重ねた。
 
 ただ、それは特別なことではなく、彼にとっての日常。学生時代に培ったパソコンによるデータ解析力を活かして、自身のプレー分析を続ける。J1やヨーロッパのサッカーだけでなく、J2の試合も見て映像資料として蓄積し、iPadやパソコンを使って常に研究を重ねたその成果が、202得点につながっている。
 
 「考えに考えること」――。
 
 得点を取るためにやっていることを、佐藤はこういう言葉で表現した。例えば、201点目となった16節・山形戦の2点目。ドウグラスのヘッドがバーに当たった時から混戦が続き、ボールはパチンコ玉のように何度も変化した。通常、その渦中に考えを巡らせる余裕などないものだが、ひとり冷静を保っていたのが佐藤だ。水本裕貴のパスをスッと浮かせ、腰の回転を使って強烈に叩き込んだ。このゴールをエースは「遊びの中でやっていた」と言う。

 
■J1通算最多得点トップ10    
順位 選手名 現所属・最終所属 J1得点(J2得点) 試合数
1 中山雅史 札幌 157(0) 355
2 佐藤寿人 広島 152(50) 358
3 マルキーニョス 神戸 150(0) 328
4 大久保嘉人 川崎 143(18) 321
5 三浦知良 横浜FC 139(18) 321
6 前田遼一 FC東京 138(17) 338
7 ウェズレイ 大分 124(0) 217
8 ジュニーニョ 鹿島 116(65) 264
9 エジミウソン FC東京 111(0) 236
10 柳沢 敦 仙台 108(0) 371

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