【浦和】久しぶりにワクワクできる終盤戦!コンディション不良、過密日程、進まぬ戦術浸透…3重苦をチームはどう乗り越えたか

2021年09月10日 佐藤亮太

リーグでも来季のACL出場権争いに踏みとどまる7位

「戦うDNAができつつある」と手応えを語るリカルド・ロドリゲス監督。(C)SOCCER DIGEST

 望外の結果と言っていい。

 東京オリンピックによるリーグ中断後、浦和の戦績は公式戦4勝3分1敗。リーグは勝点「45」の7位。3位神戸までは3ポイント差で来季のACL出場権争いに踏みとどまっている。ルヴァンカップはベスト4に。天皇杯ではベスト8に進出した。

 端から見れば、置かれている状況は順調だが、決してそうではなかった。

 遡ること1か月前の8月6日。中断明け初戦となる札幌戦前の定例会見で、リカルド・ロドリゲス監督の表情は冴えなかった。理由はコンディション不良の選手が続出していること。さらに自身、想定外の移籍が重なり「期待したほど積み上げることができなかった」と調整不足を認めた。案の定、札幌戦は2-1で敗戦。今季ワーストの内容だった。

 そのなかMF平野佑一、DFアレクサンダー・ショルツ、FW木下康介が加入。そしてDF酒井宏樹が合流したものの過密日程で限られた時間内での戦術浸透が求められた。さらに同月12日の練習でFWキャスパー・ユンカーが右頬骨骨折と暗雲が立ち込めた。

 コンディション不良。過密日程。進まぬ戦術浸透。この3重苦で連敗してもおかしくない状況をどう持ちこたえたか。

 まずはロドリゲス監督の理想を捨て、現状を踏まえた戦い方へのシフトが挙げられる。

 その一例がDF明本考浩のFW起用だ。打ち寄せる波のような前線からの執拗なプレスが奏功し、鳥栖戦、徳島戦、広島戦とタフな試合を制した。
 
 さらにコンディションに配慮すべく交代カードで選手の疲弊を極力抑えた。加えて練習時間を変更。当初はゲリラ雷雨を考慮し午前に設定したが札幌戦以降は休養最優先で午後に変更した。

 理知的である一方、指揮官は勝負師の顔を垣間見せた。

 苦しい台所事情をポジティブにとらえ、新加入選手を次々と抜擢。なかでも一足先に加入したMF江坂任のフィットの速さには舌を巻いた。離脱中のMF小泉佳穂に代わって奮戦。もし江坂がいなかったらと思うだけで背筋が凍る。西野努TDら強化部の先を見越した判断が図らずも早い形で結実したが、なぜここまで新加入選手のフィットが早かったか?
 

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