若手重視と“銀河系”…マドリーの2つの戦略とヴィニシウス売却を巡るジレンマ【現地発】

2021年09月09日 エル・パイス紙

サッカー面と経済面のダブル効果を狙っている

ここまで3戦3発と好スタートを切っているヴィニシウス。(C) Getty Images

 ヴィニシウス・ジュニオールのレバンテ戦での活躍はレアル・マドリーにとってサッカーの枠を超える意味合いを持っている。
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 近年、マドリーは、自前で育てたカンテラーノと海外から青田買いした逸材を融合させた若手戦略を推し進めてきた。それはジネディーヌ・ジダン、ロナウド、カカ、クリスチアーノ・ロナウド、ガレス・ベイル、エデン・アザール、そして今夏獲得を目指したキリアン・エムバペといったスター選手を、巨額を投じて買い漁る"銀河系"戦略とは一線を画している。

 大きな違いはサッカー面と経済面のダブル効果を狙っている点だ。欧州ではボルシア・ドルトムントやアヤックスといったクラブもこの有望な選手に投資してキャピタルゲインを得るという戦略を推進している。
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 実際、マドリーにとって若手選手の売却は重要な収入源になっている。アシュラフ・ハキミ(インテルへ、現パリSG)、マルコス・ジョレンテ(アトレティコ・マドリーへ)、セルヒオ・レギロン(トッテナムへ)、マルティン・ウーデゴー(アーセナルへ)はその代表格で、4人の売却額を合計すると1億5000万ユーロ(約188億円)以上に達する。

 これは例えば、いずれもクラブレコードのベイルとアザールの獲得に費やした移籍金1億ユーロ(約125億円)を大きく上回る。もちろん4人が4人とも素晴らしい能力の持ち主だ。しかしある者は成長を待っている時間的余裕がなく、ある者は大きな伸びしろはないと判断され、ある者は過大評価と見なされ退団を余儀なくされた。

 三者(マドリー、選手、移籍先のクラブ)のうち誰の判断が正しかったかは時間が解決することになるだろう。ただ一つ確かなのは、コロナ禍による深刻な財政難にあえぐ中、大きな助けになったことだ。

 その意味で、プラスになっているのがマドリーブランドの威力だ。昨今の欧州サッカーシーンにおいてマドリー出身の選手が様々なクラブで活躍を見せている。数か月前、EURO2020に出場するスペイン代表のメンバー24名のうちマドリー所属の選手がゼロだったことが物議を醸した。しかしその中でマルコス・ジョレンテ、ディエゴ・ジョレンテ、アルバロ・モラタ、パブロ・サラビアの4人はれっきとしたファブリカ(=工場。マドリーのカンテラの愛称)で育った選手だ。これはクラブの育成、経営戦略が機能していることの何よりの証である。

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