帰化選手に頼らず「専守防衛」を徹底した中国指揮官の思惑とは? 日本は最終予選初白星も大迫を軸とする現体制では…

2021年09月08日 加部 究

中国のサッカー強化策は卓球界の裏返し

中国代表は登録された帰化選手4人全員をスタメンで起用することなく、守備的陣形を敷いた。(C)Getty Images

[カタール・ワールドカップ・アジア最終予選]日本1-0中国/9月7日/ハリファインターナショナルスタジアム

 中国は国家戦略と現場の意思の乖離(かいり)が透けて見えるような戦い方を選択してきた。

 今回の日本戦で登録された帰化選手は4人。ほかにリカルド・グラルやフェルナンジーニョも加えようと試みたが失敗した。中国はクラブチームが爆買いしてきた助っ人選手たちを軒並み帰化させて早急に強化策を押し進めようとしたのだろうが、おそらく同国代表として百戦錬磨の李鉄監督はもう少し現実的だった。

 中国のサッカー強化策は、卓球界の裏返しだ。卓球の世界選手権は、中国から転籍した多彩な国旗を胸につけた選手たちが集い、まるで広義の中国選手権のような様相を呈す。

 概してサッカーほど代表入りの定義が厳密な競技は見当たらないので、卓球界でも本国で代表になれない選手たちの移住転籍が後を断たない。だが他国で代表になった選手が本国の代表を破ることも、中国選手を受け入れた国が急激に強くなることも、滅多にない。依然として欧州に目を向けても、比較的上位に君臨し続けるのは自国選手が育つ流れが定着しているドイツやスウェーデンなどだ。
 
 結局、中国の李鉄監督は、帰化選手全員をスタメンに送り込み攻撃的に出たところで、日本を脅かすには至らないことを認識していた。それはオスカルやフッキを擁した上海上港がJクラブを圧倒できなかった現実を見れば、容易に推測出来たに違いない。

 彼らは助っ人同士でパス交換をして相手ゴールを脅かしたが、その分守備には穴を開けた。日本代表でフル出場した柴崎岳は、後半「テンポが速まり過ぎてカウンターの応酬になるのは避けたいので、自分にボールが入ったら落ち着かせることを考えた」というが、もしそんなオープンな展開になったら、より点差は広がっていた可能性が高い。

 さらに言えば、中国代表の指揮官は、帰化選手が過半数を占めるような代表強化策には、早くも遅くも限界がきて、下手をすれば以前の中国代表に逆戻りしてしまうことも見切っていたのかもしれない。
 

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