共有不足が招いたオマーン戦の大失態。指揮官が強調する“臨機応変さ”もまるで見られなかった

2021年09月04日 河治良幸

システム上のミスマッチをアドバンテージに持っていけなかった

ホームでオマーンにまさかの敗戦。相手に対する試合前の事前共有が足りていなかった印象だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

[カタール・ワールドカップ・アジア最終予選]日本 0-1 オマーン/9月2日/市立吹田サッカースタジアム

 日本は最終予選の初戦でオマーンにホームで0-1と敗れて、最悪のスタートとなってしまった。日本が徹底的に押し込んでゴールを決めきれず、ワンチャンスを決められた訳ではない。

 先に88分の失点シーンを振り返ると、オマーンがセカンドボールを拾ったところから、右サイドに流れていたサラー・アル・ヤヒアエイが、アル・アラウィとのワンツーで古橋亨梧、柴崎岳、長友佑都のディフェンスを突破する。その間にゴール前ではFWアル・ハジリが植田直通とマッチアップした場所に、途中出場のアル・サビが外側から植田の手前に飛び込み、アル・ヤヒアエイのクロスに右足で合わせた。

 この局面を切り取ると、サイドでアル・ヤヒアエイを挟み込みながら奪いきれなかった古橋と柴崎の問題、さらに長友のカバーリングが中途半端になったこと、そして植田が目の前のアル・ハジリを意識しすぎて、外側から来たアル・サビに対応できなかったことなどの問題の指摘はできる。

 しかし、それまでに得点を奪えず、相手にチャンスを与えていた試合展開に向き合わなければ、この試合の本質的な問題は見えてこない。コンディションやオマーンとの準備期間の差、森保一監督の采配など、いろいろな敗因が指摘されるが、オマーンとのシステム上のミスマッチを日本側のアドバンテージに持っていけなかったことが大きいと見ている。
 
 オマーンが採用したダイヤモンド型の4-4-2は対日本で特別仕込まれたシステムではなく、クロアチア人のブランコ・イバンコビッチ監督が2020年1月に就任してからメインに用いているもので、日本側にも情報はあったはず。もちろん日本のホームということで、スタートから引いてブロックを組んでくるとか、異なるシステムでくる可能性も考えられたが、実際は違っていた。

「誠心誠意を尽くして戦った結果」と振り返るイバンコビッチ監督は「戦術的にどうやって驚かせたかというと、ハイプレスだ。ハイプレスをすることによって、日本が最近経験してきた3、4試合とは違う内容の試合をしたと思う」と攻略法を説明した。

 実際、オマーンはダイヤモンド型のままで、立ち上がりからハイプレスをかけてきた。日本がボールを高い位置まで運ぶとラインを下げ、2トップを残しながら4+3にトップ下のアル・ヤヒアエイが加わる形でバイタルに蓋をしてくる。しかし、いきなり引いてくる相手ではなく、攻撃時には中盤に起点を作ってくるので、4-2-3-1の日本はミスマッチの中でのアダプトを求められることになった。

 そしてオマーンの攻撃において「選手は雨に慣れていないので、雨は大問題だった。なのでGKからどうやってビルドアップしていくかについて考えていた」と語るイバンコビッチ監督によれば、通常よりもロングボールを前線に当てて、セカンドボールを拾って仕掛ける意識を強めていたようだ。

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