危機感と充実感の両輪で――相模原ですべてを懸けて戦うパリ五輪世代DF木村誠二の不退転の決意

2021年08月22日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「やるべきことがたくさんある。満足できている感じはない」

中断期間に相模原に加入し、リーグ再開後は2試合でフル出場。実戦を重ねながら、木村は確かな手応えと進化のきっかけを掴んでいる。(C)J.LEAGUE

「もう一度自分を見つめ直し、成長できるよう全力で戦ってきます」

 7月26日、FC東京の公式ホームページ上で、SC相模原への育成型期限付き移籍が発表された木村誠二はそう決意を示した。

 FC東京の下部組織出身で、ユース時代の2018年、19年は2種登録され、U-23チームでJ3のピッチに立ち、2シーズンで計37試合に出場。19年のザスパクサツ群馬戦ではプロ初ゴールも決めている。

 満を持してトップ昇格を果たした昨季は、J1で3試合の出場にとどまった。迎えた今季は京都サンガF.C.に育成型期限付き移籍。しかし、新天地でも思うように出番を得ることができなかった。そして今夏、京都から相模原に新たな活躍の場を求めた。

 今季のここまでの流れを、長身DFは次のように振り返る。

「東京から京都に行く時は、はじめての移籍で、カテゴリーがひとつ落ちるのもあったんですけど、自分の中でちょっとした甘えがあって。使ってもらえるんじゃないか、みたいな。チームの中の競争になるとは思っていたんですけど、そこで勝てなくて。

 今回、こうやって相模原に来る時には、まだ(プロ)2年目ではありますけど、『後がない』というふうに思いました。ここで結果を残せなかったら、来年以降、プロサッカー選手は厳しいなと。背水の陣というか、そういう気持ちで、危機感はかなり強いです」

 京都時代にその危機感がなかったわけではない。ただ試合から遠ざかるなかで、「徐々にそういう気持ちも薄れていった部分もあるのかなと今、思っています」と振り返る。

 相模原に移籍後、中断明けの最初の栃木SC戦、続く直近のヴァンフォーレ甲府戦はいずれも3バックの一角でフル出場を果たす。チームは栃木戦で0-0のスコアレスドロー、甲府戦は2-1で勝利。2試合で勝点4奪取に貢献している。

「合流したのがキャンプからで、そこでチームに馴染みやすかったというのもありましたし、練習試合をこなしていくなかで、周りとの連係も多少は取れるようになっていきました」
 
 そして実戦をこなすなかで、確かな自信とさらなる進化のきっかけを掴んでいる。

「公式戦に出ないと味わえない雰囲気もあるし、その緊張感の中で自分がどれだけやれて、どこをどうやって改善すればいいのかは、試合に出ながらでないと直せないと思う。そういう意味では、試合に出られているのはプラスだと思います」

 危機感はある。その一方で、充実感もある。気力はますますみなぎっているが、現状に甘んじているわけでもない。

「まだまだやるべきことがたくさんある。満足できている感じは全然ない」

 ストロングポイントは186センチのサイズを利した高さ、そして「あんまり言われないんですけど、けっこう足も速くて」というスピードだ。「高さと速さの部分では絶対に負けてはいけないと思っている」と表情をグッと引き締める。

 世代別代表の常連で、今月24日には20歳になる。将来を嘱望されるパリ五輪世代の若武者は、周囲の期待に応えるような成長を遂げられるか。

 なによりも、今、置かれている状況で結果を出すしかない。オファーを出してくれたこと、そしてピッチに立つ機会を与えてくれている相模原には感謝の気持ちを示し、「チームの目標である残留に貢献するために来ました。それはしっかりやり遂げたい」と言葉に力をこめた。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

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