【なでしこサッカー新時代】第4回 髙瀬愛実 (後編)|「一度はどん底に落ちたから、もう何も怖いものはない」

2021年08月30日 西森彰

「もうバカみたいにトレーニングをやっていました(笑)」

髙瀬選手、2016年時の姿。(C)SOCCER DIGEST

 「なでしこサッカー新時代」第4回のゲストは「フィジカルモンスター」の異名をとる髙瀬愛実選手。

 重戦車のような肉体は、新人時代の「貯金」が基になっているという。後編では、その「貯金」の正体と、デビューや同期、得点王の栄光から、挫折とサイドバックへのコンバートまで、山あり谷ありのサッカー人生をどう乗り越えたのか、率直に語ってもらった。


――髙瀬選手は「フィジカルモンスター」という異名をお持ちですが、 普段から特別なトレーニングをしているのでしょうか?

 フィジカル面については、自分は「貯金」だと思っています。若い時からコツコツと…いや、バリバリとやっていたので(笑)、そういう積み重ねが今に表われているのかなと。若いころに「貯金」をしていたからこそ、今もチームの中でも当たり負けしないようにやれているように思います。

――若い頃はどのくらいのトレーニングをこなしていたんですか?

 もうバカみたいにやっていました(笑)。

 今は、SNSが発達したり、女子サッカーに注目が集まったり、トレーニングの意識はすごく高まっています。得られる情報もすごく増えました。ただ、私が若いころは、なかなか知識を得られるところがなくて。自分で考えながら、「毎日とりあえずやる」「筋肉痛になってもひたすらやる」みたいな。

 トレーニングの方法が正しかったかは分からないですが、ヒントは「次の日に、ここが筋肉痛になっているから、ここに効くんだな。続けてみよう」という身体との対話でした。自分で考えるという部分も含めて、鍛えられたのかなと思いますね。

――自分の身体で、人体実験をしているみたいな感じですね。

 本当にそうです。私は今まで、情報を集めに行くという考えができなかったタイプでした。でも今は、チームのスタッフの方もそうですし、いろんな方面からより良いものを教えてもらうことができるので、取り入れながらやっています。

――INACの中では、もう、レジェンド的な立場ですが、資料を探していて、こんなものが出てきました。

 デビューした年(2009年)の、なでしこリーグのパンフレットですね。写真が(笑)。

――現在も、INACで同僚の中島依美選手をはじめ、髙良亮子選手、堰愛季選手、倉原穂奈美選手といらっしゃいます。同期で競争したり、励ましあったりした思い出はありますか。

 私だけがそう思っていたら、すごく恥ずかしいんですけれども…同期はすごくいい関係が続いています。仲良くべったりというのとは違う、でもいざ、何かしなければいけないという時には、しっかり集まって助け合える仲間です。

――INACへの入団を決めたきっかけは何だったのですか?

 当時、なでしこリーグでプレーしたいけれど、どこからも声がかからないだろうなという風に思っていたんです。「大学で積み重ねてから…」と考えていた私に、声をかけてくれたのがINACでした。

 私は「(北海道文教大学明清高校、現・北海道文教大学附属高等学校の)先輩方が行ったことがないチームで、なでしこリーグの中位くらいのチームに行けたら」と考えていて、その条件にぴったり当てはまるクラブに声をかけてもらったので、迷いませんでした。

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