【川崎】鬼木達監督が考える若手の海外移籍とチームとしての気概。欧州挑戦を決めた田中碧、三笘薫への温かいエール

2021年08月14日 本田健介(サッカーダイジェスト)

「とにかく大きくなってほしいという想いが」

監督に就任した2017年にトップチームへ昇格した田中。その成長を見守ってきた(C)SOCCER DIGEST

 すべてのコンペティションで開幕から無敗。川崎は昨季から続く圧巻の強さを今季も継続している。

 リーグ連覇、悲願のACL制覇。そして天皇杯連覇、ルヴァンカップの2度目の優勝も、シーズン後半は目指していくことになる。

 もっとも東京五輪へ臨む前に田中碧がドイツ2部のデュッセルドルフへのレンタル移籍を決め、五輪を終えた8月10日には三笘薫のイングランド1部・ブライトンへの完全移籍(初年度はベルギー1部のユニオン・サンジロワーズへ期限付き移籍)も発表された。

 8月13日にはウイングをこなすブラジル人の新助っ人FWマルシーニョの加入が決まったが、田中、三笘はともに欠かせない戦力だっただけに、どうカバーするかはひとつのポイントになる。

 その点で改めて鬼木達監督のチームマネジメントも注目だが、新たな挑戦へ臨むふたりの教え子に向けたエールも気になるところ。指揮官に尋ねると、ふたりとの会話を教えてくれた。

 田中に関しては、ウズベキスタンで開催されたACLのグループステージに臨む直前にチームを離れ、渡独。その後、日本に戻って東京五輪を戦い、大会後にはオンラインでクラブが行なった"壮行会"で本人がサポーターへメッセージを伝えていた。

「(碧とは)オリンピック後に話すことができなかったのですが、移籍すると決まった時には、いろいろと、かなり話しましたね。彼も感情的になっている部分があって、悲しそうに話してもいましたが、ただ決断したことであり、とにかく大きくなってほしいという想いがありました。このクラブから巣立っていくのだから、そういうものを出してほしいという話をしましたね」(鬼木監督)
 
 一方、三笘はACLに参戦したものの、その後、怪我を抱え、東京五輪ではなかなか持ち味を発揮できず。それでも、途中出場したメキシコとの3位決定戦ではキレキレのドリブルで相手DFを手玉に取り、ゴールを決めてみせた。大会後には同期の旗手怜央と一緒にクラブハウスを訪れたという。

「薫に関してはACLが終わった後、いやACLの途中ですかね、いろいろな話をしました。彼はずっと誘われてきた中で、チームでいろんなものを残していきたいとの想いでプレーし、旅立つ形になりました。ですので、クラブに心の準備を与えてくれましたし、向こうのクラブから『欲しい、欲しい』という状況だったので、すごい結果を残してきたんだなと改めて感じましたね。

 そういうことを話したり、あとは感謝というか、想いを伝えました。ただ彼もここからが勝負だと思うので、そういった話もしました。(五輪から)帰ってきてから、薫は怜央と一緒に来て、そこでもいろんな話をしたなかで、オリンピックではどうしても不完全燃焼という取り上げられ方をされてしまいますが、彼は常に自分に矢印を向けるので、またひと伸びするんだろうなという想いを感じました。タイプ的にはちょっと気持ちが見えにくそうなタイプかもしれないですが、すごく芯のある子なので、強さはあるんです。そういうものを出していってほしいですね」(鬼木監督)

 ふたりへの想いを語る際、優しさに満ちた鬼木監督の表情を見ていると、心から彼らの活躍を願っていることが感じられた。

次ページ強調するコーチングスタッフの存在

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事