【中断明けの青写真|金沢】再浮上へ柳下監督は原点回帰を決断。迷いのないボールアタックでプレスが甦るか

2021年08月10日 村田亘

一時は3位浮上も5月に入り守備に陰り。臨機応変な連動からプレスポイントをはっきりと決める方向へ

原点回帰で後半戦に臨む金沢。果たして、リーグ戦での再浮上はなるか。写真:滝川敏之

 東京五輪開催でJリーグは一時中断。その間、各チームは戦力補強やミニキャンプ実施など、再開後に向けて準備を進めている。五輪後はいかなる戦いを見せてくれるか。ここでは、J2のツエーゲン金沢を取り上げる。

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 中断期間はキャンプを行なわず、戦術的にとくに新しいことを始めたわけでもない。いまのところ補強選手もいない。そんななかで柳下正明監督が示した方向性が原点回帰、先鋭化だった。

 今シーズンはスタートダッシュに成功し、一時は3位に浮上することもあった金沢だが、5月に入って一度歯車が狂うと勝てない時期が続いた。その要因のひとつは積極的にボールを奪いにいく守備に陰りが見えたことだった。柳下監督はボールを失った際、臨機応変に連動してプレスをかけ、それが駄目なら一旦引いてセットした状態から再び出ていくことを選手たちに求めた。また対戦相手によっては中盤のスペースを使われないようにするため、前からプレスにいきすぎないように求めることもあった。しかしそれらがうまくいかず結果的に引いてしまうことが多くなると、持ち味の激しさが失われ、攻撃に移っても前線が孤立することが目立つようになっていった。
 
 そこで中断期間を前に指揮官は原点回帰を決断。できるだけ前からプレスをかけ、攻から守への切り替えの際には誰がどこにプレスにいくかをある程度決めて、迷いなくボールにアタックできるように変化させた。中断期間もボールを奪う・奪い返すことにフォーカスした練習を続けた。

 攻撃面でも立ち返ったのは原点。まずはゴールに一番近く守備側が嫌なところを素早く狙うこと、そしてボールを前に進めること、選手が走ることを求めた。パス&ムーブを繰り返すことで相手を動かし意図的にスペースをつくり、適切なタイミングでそこを使う。局面での数的優位をつくるためにボールホルダーを追い越す。練習ではそういった部分に重点が置かれた。「怖がらずにどんどん行こうということ。新しいことではないけど、もっともっと強調して伝えた」。柳下監督はそう狙いを明かしてくれた。

 指揮官はメンタル面でも選手たちを鍛え直した。毎日の練習は長くても90分ほどと時間は短かったが、炎天下で強度の高いメニューが続いた。選手たちの足が止まり、集中力が切れそうになったときには「きついけど、ここだぞ」とコーチングスタッフから叱咤激励の声が飛んだ。苦しくなったときにどれだけマークにつききれるか、そしてボールを奪って前に出ていけるか。個々のレベルアップと、いかにチームのために戦えられるか、その姿勢が求められた。
 

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