周到だったメキシコの狙い、悔やまれる前田・三笘の起用法…日本はなぜまたしてもメダルを逃したのか?【東京五輪】

2021年08月07日 元川悦子

日本人の西村亮太コーチを擁するメキシコの分析力は高かった

三笘の仕掛けは確かにメキシコの脅威となっていた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

「今日、勝つって決めて来て、グループリーグで勝っていた相手だったので、結果論ですけど、どこか気の緩みがあったかもしれないし、ちょっと……。このメダルの重みが自分たちに理解できなかったのかなって思います」

 タイムアップ直後、ピッチに倒れ込んで号泣した久保建英(レアル・マドリード)がテレビインタビューで悔しさをにじませた通り、日本は手をかけたはずだった東京五輪メダルを逃す結果になった。
 
 7月25日のグループリーグ第2戦でU-24メキシコ代表と対峙した際には、彼自身の先制ゴールと堂安律(PSV)のPK弾によって、開始12分で2-0とし、勝負をほぼ決めた日本。しかし、6日の3位決定戦は全く逆の構図になった。

 この日の日本は序盤から相手にボールを持たれ、受け身に回り、選手たちの出足の鈍さと身体の重さが色濃く感じられた。前回は尖ったナイフのように切れ味鋭かった久保と堂安も疲労感を拭いきれなかった。

 そんな日本をあざ笑うかのように、メキシコは開始11分にベガ(グアダラハラ)の突破を許し、遠藤航(シュツットガルト)が背後から追いかけて倒し、PKを献上。コルドバ(クラブ・アメリカ)に難なく決められ、いきなりビハインドを背負う。さらに10分後にはFKからバスケス(ナシオナル)に飛び込まれ、追加点を奪われる。

 2つの失点は、いずれも右サイドバック・酒井宏樹(浦和)のタテパスからの攻撃を狙われ、ボールを失ったのが発端になっている。前者は久保と堂安のパス交換から奪われ、いったんは守備組織を立て直したかと思われたが、久保と遠藤の間をベガに割られた。後者は林にボールが入らず、1トップ・マルティン(クラブ・アメリカ)がキープしたところに吉田麻也(サンプドリア)が寄せてファウルを取られてしまった。

 日本人の西村亮太コーチを擁するメキシコの分析力は高く、どういう形で日本の攻撃が組み立てられているのかを熟知していたのだろう。遠藤と田中碧(デュッセルドルフ)の両ボランチの距離感も遠く、小気味いいパス回しが影を潜めたが、それも対策の成果だろう。最終的に久保と堂安に点を取らせるという「日本の形」が封じられたのは痛かった。

【東京五輪】男子サッカー 全試合結果&グループステージ順位表

次ページ「守備のバランスが最優先」という原則に囚われているように見えた森保監督の采配

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事