「金の色もいいけど、銅もいい色をしているじゃないか」53年前の再現へ、日本がメキシコで打ち立てた金字塔【東京五輪】

2021年08月04日 石川聡

大観衆はメキシコの勝利を信じて疑わなかった

絶対アウェーのアステカで釜本(15番)が2得点の大活躍。日本が五輪サッカーで初のメダルを獲得した。(C)AFLO

 8月3日夜に行なわれた東京オリンピックの準決勝で、日本は延長戦の末にスペインに0-1で敗れ、初の決勝進出はならなかった。勝てば銀メダル以上が確定した一戦。53年前のメキシコシティー大会で獲得した銅メダルの偉業を超えることが期待されたが、その夢がはかなく消えてしまった。

 それでもまだオリンピックが終わったわけではない。6日金曜日の20時に埼玉スタジアムでキックオフされる3位決定戦で、銅メダルを懸けてメキシコと戦う大仕事が残されている。このカードはくしくも1968年メキシコシティー大会の3位決定戦と同カード。日本がホスト国を2-0と破って金字塔を打ち立てたのと、ちょうど真逆の状況で迎えるわけだ。今回の3位決定戦の予備知識として、53年前の戦いを簡単に振り返ってみよう。

 舞台はメキシコシティー郊外の巨大なアステカスタジアムだった。準決勝で連覇を狙うハンガリーに0-5と大敗した日本の相手は、ブルガリアに2-3で競り負けたメキシコ。地元の熱狂的な声援を受け、この7か月前にも遠征して来た日本を4-0で打ち負かしているメキシコの下馬評が高いのは当然だった。10万5000人の観客のほとんどすべてが、メキシコの勝利を信じていたに違いない。
 
 ところが、試合は彼らの意に反して日本ペース。堅く守り、釜本邦茂、杉山隆一に得点を託す日本は、その攻撃の2枚看板が期待に応える。20分、左サイドでボールを保持した杉山が、ペナルティーエリア内の釜本にクロス。これを胸で受けた釜本は、左足でゴール右隅に決めて先制した。さらに、40分の追加点もこの黄金コンビ。やはり左からの杉山のパスを受けた釜本が右足を振り抜くと、低い弾道のシュートがゴールネットを揺らした。

 彼らの呼吸について、コーチだった岡野俊一郎は「二人の間に特別の糸が張ってあり、その上をボールが伝って行くようにさえ思われた」(日本蹴球協会機関誌『サッカー』、1968年12月号)と振り返っている。釜本は大会通算7ゴールで得点王に輝いた。

次ページ「試合の天王山」だったPKのピンチでは…

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