本田がオーストリア3部のSVホルンを買収。一大プロジェクトの狙いとは?

2015年06月10日 サッカーダイジェスト編集部

買収劇の背景に、日本人選手の欧州移籍への門戸を広げる狙い。

現役選手がクラブオーナーを務めるのは極めて異例。日本人選手の欧州移籍を支援するために本田がひと肌脱いだ格好だ。(C) Getty Images

 本田圭佑が欧州クラブを買収――。そんな夢のようなビッグプロジェクトが正式に決まった。本田が所属するHONDA ESTILO株式会社(本社・大阪府吹田市)が6月9日、オーストリア3部のSVホルンの経営に新シーズンから参入することを発表したのだ。
 
 これは事実上、本田がSVホルンのオーナーに就くことを意味している。現役の日本代表選手が、ヨーロッパのプロクラブを買収するのは、過去に例がない。いかにも本田らしい、夢のプロジェクトになる。
 
 では、なぜオーストリアなのか。ESTILOの説明では「トップチームの保有を目指して、数年前から動いており、外国人枠の制限が他国よりも弱く、チャンピオンズ・リーグなどの最高峰の舞台に立てる可能性があるオーストリアに注目しておりました」という。
 
 例えば本田が所属するセリエAは、新シーズンに加入するEU圏外選手の追加登録は、ひとりしか認められていない。プレミアリーグでも、EUとEFTA(ヨーロッパ自由貿易連合)加盟国以外の、外国人選手登録は3人まで。それに比べてオーストリアリーグは、一定数のオーストリア国籍選手を先発メンバーに入れさえすれば、ベンチ入りメンバーの半数近くをEU圏外選手で埋めることも可能だ。本田が着目したのは、その「EU圏外選手枠」だった。
 
 日本人選手の欧州移籍の門戸を広げる――。それが極めて異例ともいえるSVホルン買収劇の大きな背景にある。
 
 経営参入の発表と同時に、SVホルンの保有権を持つESTILOは、6月下旬に東京でトライアウトを実施することを公表したのだ。概要は「近日中にESTILOの公式サイトに掲載」としている。すでにSVホルンには明治大出身のMF矢島倫太郎が今年2月に加入し、元浦和コーチのモラス雅輝がコーチを務めている。さらなる日本人選手獲得に主眼を置いたトライアウトになることは間違いなく、ESTILOも「日本の多くのサッカープレーヤーに、SVホルンでプレーできるきっかけを与える」と強調している。本田のお眼鏡にかなった選手を数多く獲得し、オーストリアへ送り込む方針だという。
 
 本田は、全国に小学生向けの「ソルティーロ・ファミリア・サッカースクール」を49校展開する。在籍児童は2000人を超え、本田の理論を軸にした指導を徹底している。そこで育った子どもたちが、将来的にSVホルンを経由し、最終目的地として欧州のビッグクラブに羽ばたく――。そんな、とてつもなく大きな夢が、現実になるかもしれない。

次ページ最速で3シーズン後の1部昇格とCL出場。

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