PK辛勝も「負ける気がしなかった」という久保の言葉に共感。準決勝への不安要素は無得点だったことよりも…【東京五輪】

2021年08月01日 江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

ワンチャンスを狙っていたニュージーランドを抑え込む

連続ゴールが止まった久保だが、「今日は僕以外にヒーローがいる」とチームメイトを称えた。写真:金子拓弥 (サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

[東京五輪 準々決勝]U-24日本0(4PK2)0U-24ニュージーランド/7月31日/茨城カシマスタジアム

「点を取られる気がしなかったし、PK戦でも負ける気がしなかった」

 久保建英の試合後のコメントは、強がりには聞こえなかった。

 たしかにゴールは奪えなかったし、延長戦を含めた120分間で、ニュージーランドを仕留めることはできなかった。PK戦になった場合、普通は主導権を握って攻め込んでいたチームのほうが嫌な感じがするものだ。ただ、このU-24日本代表がPK戦で敗退するところは想像できなかった。

 それは勢いだけでなく、漲る自信、そして雰囲気の良さがあるからだろう。22人全員が役割を果たし、大会中にどんどん強くなっている感覚がある。

 もともとはバックアップメンバーだった林大地が、上田綺世と前田大然がコンディション不良の間にレギュラー格にのし上がれば、故障で1、2戦を欠場した冨安健洋の穴を板倉滉がしっかり埋めた。フランス戦では、初先発の上田と旗手怜央がインパクトを残し、このニュージーランド戦では、出場停止の酒井宏樹の代役を橋岡大樹が見事に務めた。チーム、そして一人ひとりが自信を持ってプレーしているのが、目に見えて伝わってくるのだ。

 ニュージーランド戦でその自信が慢心になった、という見方は違うだろう。そもそもオセアニアの雄は、グループステージで韓国を破ったように、決して侮れないチームだった。

 守備を固めてくるのは想定されていたが、ソリッドな5バック+3MFのブロックを崩すのは容易ではなかった。こうした相手を崩しきれないという、グループステージの南アフリカ戦(1-0)と同じ課題は残ったが、もはやそれをくどくどと指摘しても仕方がない。この先の2試合で、日本を相手にここまで守備一辺倒でくる相手は、おそらくないからだ。

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 むしろ、ワンチャンスを狙っていたニュージーランドをしっかりゼロで抑えたところを評価すべきか。吉田麻也と冨安のCBコンビは敵の主砲クリス・ウッドに仕事をさせなかった。

 最大の誤算は、その冨安が今大会2枚目のイエローカードをもらい、スペインとの準決勝に出場できなくなったことだ。元来、カードが多い選手ではないが、出場2試合目で2枚目を、やや不用意な形でもらってしまった。

 2試合210分間無失点の吉田と冨安のCBコンビは、今大会最強と言っても過言ではない。強豪スペインを相手にそのペアが組めなのはやはり痛いが、板倉が穴を埋めてくれるだろう。その意味では、リーチがかかっていた遠藤航と田中碧が、カードをもらわずに済んだのは幸いだった。この2人のバックアッパーも板倉が兼ねているからだ。

 7月17日のテストマッチでは1-1。その時は来日直後でコンディションが整っていたスペインは、まったく別のチームになっているだろう。だが日本も、4試合を通じて、ワンランク上のチームに成長している。

取材・文●江國森(サッカーダイジェストWeb編集部)
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