【中断明けの青写真|横浜FC】目途が立った新システム。5人の新助っ人をいかに組み込むか

2021年07月29日 二本木昭

1トップの位置で得点の量産が期待されるS・ミネイロ

スピード、フィジカル、テクニックの3拍子揃った新戦力FWサウロ・ミネイロ。新たな得点源としてかかる期待は大きい。(C)Getty Images

 東京五輪開催でJリーグは一時中断。その間、各チームは戦力補強やミニキャンプ実施など、再開後に向けて準備を進めている。五輪後はいかなる戦いを見せてくれるか。ここでは、J1・横浜FCを取り上げる。

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 22試合を消化し、2勝5分15敗で最下位に沈む横浜FC。ただ、シーズン半分の19試合で1勝5分14敗だったのに対し、直近の3試合は1勝1分1敗で、試合内容にも改善が見られる(まだ後半戦のデータが少なすぎるというご指摘はもっともだが、あえて丁重に無視させていただく)。

 その主たる原因のひとつが、4-4-2から3-4-2-1へのシステム変更だろう。変更後の前線は1トップ+2シャドーというよりは、1トップの後ろに、守備にも比重をおいてプレーするトップ下を2枚並べる感覚で、時間帯によっては5バックで守りを固めることもある。変更直後はなかなか結果に直結しなかったが、徐々に浸透し勝点が取れてきた。

 同時に、右サイドバックの前嶋洋太が右ウイングバックに、左サイドバックの高木友也が左ウイングバックへとポジションをチェンジ。ふたりとも、もともと攻撃面に魅力があるものの、守備にやや難のあるタイプのサイドバックで、下平隆宏前監督は4バックのサイドバックとして起用し続けたが、ディフェンス崩壊の一因にもなった。

 システム変更後は、前嶋、高木ともに3バックの助けもあり守備が安定。徐々にJ1の水に慣れて自信をつけ、対人の守りも改善されつつあるのは大きい。現在、前嶋は負傷離脱中だが、彼に代わって出場することとなるであろう、岩武克弥もウイングバックで活躍してくれるものと見られる。

 もうひとつ、改善されたポイントは新たに瀬古樹と高橋秀人がボランチのコンビを組むことで、試合をコントロールできるようになった点だろう。瀬古はルーキーイヤーの昨年からJ1でも目を見張るプレーを披露。そこに実績ある元日本代表の高橋が怪我から復帰したことで、リーグ戦でも自分たちのペースで試合を進める時間帯が増えている。まだまだ一部の上位チームには及ばないが、それ以外の相手には互角以上に戦えるベースはできた。

 以上のような流れから、今夏、一気に外国籍選手5人を獲得し巻き返しを図るというのは理にかなっているだろう。「なぜ、シーズン前にこのような補強をしなかったのか」という声もあるが、今季新たに獲得した伊藤翔、渡邉千真、小川慶治朗、ジャーメイン良というJ1でも名を知られたアタッカー陣が、リーグ戦においてここまで4人でわずか計3得点という結果になるとは誰にも想像できなかったはずだ。
 
 奇跡のJ1残留を果たすためには、残り16試合で少なくとも9勝する必要があるだろう。勝ち切るために必須なのは得点力。そこで新外国籍選手のうち、FWのサウロ・ミネイロに注目したい。

 この24歳のブラジル人はスピード、フィジカル、テクニックの3拍子揃ったストライカーで、ひとりで局面を打開できるし、フェイントで一瞬マークを外し崩し切らずともゴールを奪う決定力もある。1トップの位置で得点の量産が期待される。
 

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