明らかにバラバラだったフランス。王様ジニャクの不満解消で、日本戦では別のチームに?【東京五輪】

2021年07月27日 江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

「フランスは終わった」と正直思った

南アフリカ戦でハットトリックを決めたジニャク。日本はこの男に要警戒だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 フランスの五輪代表は、明らかにバラバラだった。

 そもそも、メンバー選考の時から、信じられないような失態があった。フランス・サッカー協会は6月25日にまず18人を発表したのだが、リヨン、レンヌ、ニースなどのクラブがこぞって選手の招集を拒否。登録が22人となり、1週間後に再リリースされたリストでは、超逸材エドゥアルド・カマビンカら8人が外れていた。

 通常であれば、クラブとの調整を進めてから、メンバーを発表するべきはず。ゴタゴタ感は否めなかった。

 大会に入ってからも、チームの体をなしていない印象だった。初戦のメキシコ戦では、1-4の大敗。攻撃はコンビネーション不足で個の突破頼みで、守備は統率がとれておらず、目を疑うようなラインコントロールさえあった。

 苛立ちを隠せなかったのは、オーバーエイジ枠で選出された、35歳の主将アンドレ=ピエール・ジニャクだ。マルセイユ時代には指揮官のディディエ・デシャン(現フランス代表監督)と喧嘩をしたほどの荒くれ者は、ゴール前に自分にボールが回ってこないと、両手を広げて不満を露わに。MFのテジ・サバニエが、言い返すような場面もあった。

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 続く第2戦も、このチームを象徴するかのような連係ミスで先制を許すと、格下と見られていた南アフリカに3度もリードを許す苦しい展開。中盤のキーマンである、リュカ・トゥザールが「もっとコンパクトにしろ」と声を張り上げるが、ろくに守備もせず、前線に残っているジニャクは「黙って、ボールをよこせ」と言わんばかりに、何かを言い返す。その姿に「フランスは終わった」と正直思った。

 しかし、なんとそのジニャクのハットトリックで三度追いついたフランスが、後半アディショナルタイムにサバニエの劇的なゴールで劇的な逆転勝ち(4-3)。主審から記念のボールをもらい、気を良くしたベテランストライカーは、10歳以上も歳の離れた後輩たちに声を掛け、すっかりキャプテンらしい顔になっていた。

 九死に一生を得たフランスが、2連勝でグループ首位に立つU-24日代表の前に立ちはだかる。もう前の2試合とは別のチーム、という感覚で臨んだほうがいいかもしれない。日本にとって重要なのは、王様ジニャクに気持ちよくプレーさせないことだろう。

取材・文●江國森(サッカーダイジェストWeb編集部)

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