日本の金メダルの可能性は? スペイン紙の五輪担当記者に訊く「優勝候補5か国に次ぐ存在、ニホンに勝つには骨が折れる」

2021年07月20日 セルヒオ・サントス

「メダル候補の1つと評価されて然るべき力量を示した」

金メダルの最有力候補スペインと引き分けた日本。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 スペイン戦を受けて日本が金メダルを取る可能性を論じるというのが本稿のテーマだが、その前にまず試合を取り巻くコンテクストを説明しておく必要がある。

 スペインはベストとは程遠い状態でこの一戦に臨んだ。長距離のフライトを経て来日したのが試合の3日前の14日。まだ時差ボケ(サマータイム期間中の現在のスペインとの時差は7時間)が解消せず、日本特有の高温多湿の気候にも適応する必要があった。

 また大半の選手にとってはシーズン最初の試合だった。バレンシアのベニドルムで強化合宿を行なって練習を積んでいたとはいえ、試合勘の欠如は明らかだった。一方、EUROに出場した6選手は激戦の後、束の間の休暇を経てチームに合流したばかり。事実、この日本戦もともに不動のレギュラーと目されているペドリとミケル・オジャルサバルがベンチスタートだった。

 よって1-1という結果に終わったが、苦戦するのは当初から想定済みだった。そもそもこの一戦でのスペインの目的は、本大会前に厳しい試合を経験することだった。対戦相手に運動量が豊富で、地の利を持つ日本を選んだのもそうした理由からだった。

 以上の点を踏まえたとしても、この一戦で日本が、メダル候補の1つと評価されて然るべき力量を示したのは間違いない。

【動画】久保のお膳立てから左足一閃!スペインに衝撃を与えた堂安の鮮烈弾
 
 実際、強豪国でも、日本に勝つのは相当骨が折れそうだ。ハジメ・モリヤスが率いるチームが2、3点差で負けるのは考えにくい。こうした短期決戦はいかに攻守にバランスの取れたチームを構築するかがポイントとなる。先のEUROで強豪国を撃破、あるいは最後まで追い込んだスイスやデンマークの健闘を見てもそれは明らかだが、日本にもまさにそうしたチームと同じ印象を抱いた。

 その意味でも、オーバーエイジ枠にいずれも経験豊富なDF2人と中盤1人を選出したのは賢明な判断だった。彼らが牽引役となって守備が安定すれば、自ずと攻撃陣が躍動する余地も広がってくる。

 もちろんその中心的存在はタケ・クボ(久保建英)だ。日本代表ではより自由にプレーする環境を与えられている印象で、スペイン戦でも前線を幅広く動き回りながら、攻撃をリードしていた。

 当然、自国開催でモチベーションが高まっているはずだが、さらに今大会のパフォーマンスは来シーズンの所属先を決めるうえでも重要な意味合いを持つ。活躍を見せ、レンタルを打診するクラブの数が増えれば、それだけ選択肢も広がる。自身が夢見るマドリー復帰については今夏の実現は極めて困難な情勢だが、ヴィニシウス・ジュニオールがスペイン国籍を取得し終え、ガレス・ベイルの契約が満了する来夏を見据えても、こうした国際大会でインパクトを残しておくことは大きなアピール材料になる。

 スペイン戦では先制ゴールをお膳立てするなどドウアン・リツ(堂安律)と息の合ったプレーを見せていたが、本大会でもこの2人のホットラインは日本の大きな拠りどころとなりそうだ。

【五輪代表PHOTO】U-24日本1-1U-24スペイン|五輪前最後の試合はスペインを相手にドロー決着!
 

次ページスペイン人記者から見た日本のウィークポイントは?

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事