【岩本輝雄】日本とスペインの決定的な差。“抑揚”があるかないか。同じリズムのままでは…

2021年07月18日 岩本輝雄

スペイン戦の90分間は攻撃のリズムが極めて単調だった

久保(写真)や堂安らの突破力は日本のひとつの武器。でも、攻撃が一本調子では……。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 東京五輪で優勝候補と目されているスペイン相手に、日本は1-1の引き分け。両チームのコンディションの違いや交代が11人まで可能など、いろいろ差し引いて考えなければいけないことはあるけど、本番前最後のテストマッチとしては悪くない結果だったと思う。

 EURO組が加わったばかりのスペインは来日して間もないし、蒸し暑さにもまだ慣れていないだろうから、日本戦の出来が本来の実力とは言えない。それでも随所にスペインらしさは見せていたと思う。個々の技術の高さ、的確なポジショニング、ボールの動かし方、パススピード。やっぱりちょっとレベルが違うよね。

 日本は、コースとシュートスピード、いずれも文句なしの、これぞワールドクラスという堂安の一撃で先制したけど、後半に追いつかれてドロー。押し込まれる時間帯が長く続き、辛抱強く守って1失点に抑えることができたという見方もできる。完璧に崩される場面もほぼなかった。その点は日本の底力だと思うけど、それよりも気になったことがある。

"抑揚"があるかないか。そこが日本とスペインの決定的な差だと思った。

 日本の攻撃はほぼ同じリズム。マイボールにすれば、前に力強く前進。先制点の場面でも、堂安にクロスを入れる前に左サイドを単独で突破した久保のプレーは素晴らしかった。それはそれでいいと思う。久保以外でも、堂安や相馬など、打開力や推進力に優れる選手の存在は日本のひとつの武器になる。
 
 でも、スペイン戦の90分間を見ると、攻撃のリズムが極めて単調だった。もちろん、押し込まれている時間が長くて、前がかりになっている相手の裏を狙い、"奪ってカウンター"に活路を見出していたとは思う。実際、それでチャンスがなかったわけではないけど、どこか一本調子だった。誤解を恐れずに言えば、速いだけ。スペインの監督は日本のスピードを評価していたみたいだけど、ある意味、皮肉かもしれないね。

 対してスペインは、ビルドアップでも局面の打開でも、絶妙の距離感でパスを回しながら攻撃を組み立てていく。その際、ワンタッチでつないだり、バックパスを入れてやり直したり、キープしながら時間を作ったり。状況に応じた攻撃のリズムチェンジ。速くもできるし、ゆったりとしたテンポでもできる。その使い分けが抜群だった。

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