久保建英のフワリとしたFKに見えた東京五輪で目指すべき戦い方。市川大祐が見たホンジュラス戦の収穫

2021年07月14日 サッカーダイジェストWeb編集部

同じ絵をみんなが描けているからこそ一体感が生まれます

ホンジュラス戦で先制ゴールをアシストした久保。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 3-1で勝った7月12日のU-24日本代表のホンジュラス戦、前半の入りはすごく良かったですね。

 攻撃では、ディフェンスの背後をとる動きが非常に多かった。林大地選手や、久保建英選手、堂安律選手、三好康児選手が空いたスペースにどんどん飛び出して行く形で、先手を奪えていたのがすごく良い点でした。

 また、最初のCKでも相手の状況を見てショートコーナーを使うなど、状況に応じた判断、集中力も非常に高かったと感じます。

 守備の面でも、ひとつのボールに対して反応する。細かくポジションをとりながら常に予測をして、素早く動く、密集を作る。カウンターになりそうな時は素早くポジションを戻して、前向きからの守備を始めるということが出来ていました。

 みんなが意志を統一して、どうやって守るかが整理されていて、特に、縦パスに対しての、横へのスライドや、相手のパスコースを消すところはより強く意識されていました。

 全体がコンパクトに保てていたので、選手間の距離も非常に近く、次々と守備のチャレンジに行けました。ファーストディフェンダーの決定も早く、周りの選手が次にどういう守り方をするのかというのが明確で、守備が重ならない。そういうところが非常に良かったなと思います。
 
 白眉だったのは1点目に繋がるFK、久保選手が入れたフワリとした柔らかいボールです。柔らかい緩いボールなので、ディフェンスはタイミングがとり辛い。またスペースに落としやすいという利点もあるのですが、守っている側からすると、弱いボールは大きくクリアできないという面もあります。

 速いボールだと、そこまで力を伝えなくても、ボール自体が強いので当てるだけで遠くに跳ね返せるのですが、ボールが弱いと、力を伝えないと飛ばない。ただ、競っている状況なので、なかなか力を伝えきれない。そうなると、セカンドボールがペナルティエリア近くに落ちて2次攻撃にも繋がる。

 ホンジュラス戦の前半は、押し込んだ展開でセカンドボールを拾えていた状況でもあったので、久保選手はそういうところまで考えてのキックだったのかなと思います。若くしてスペインの1部でやってきている経験というものが、あの状況であのボールを選択できたのだと思います。

 13分のシーンではスペースに落としたボールを吉田麻也選手が上手く合わせてゴールになりました。もちろん速いボールという選択もあったと思うのですが、周囲の状況やゲーム展開をイメージしながらプレー出来ているため、周囲の選手もそこに対して繋がりが持てます。

 パスひとつにしても、そこにしっかりと意図を持たせられるというのが一番重要で、味方がいたからパスを出して、繋がったからオッケーではなくて、パスを繋げたことでその選手は何ができるのか。その周りの選手たちがどんな反応ができるのか。そこまで次を考えることで、プレーがどんどん繋がっていきます。

 単発的にならずに、繋がりがあるからこそ、周りの選手たちが次のプレーに繋げられる。次の予測、同じ絵をみんなが描けているからこそ一体感が生まれます。

 久保選手のFKにはそんな背景を感じられました。
 

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